2020年から2023年までは、パンデミックでアンダーグラウンドが縮小したり閉鎖されたりしていたので、私もアンダーグラウンドから離れて表社会のほうに顔を出していたりしていた。
さすがに表社会は、素晴らしく知的で、びっくりするほど有能で、人づきあいしても気持ちの良い人が多い。これまでアンダーグラウンドでは存在しないような、立派な志の人も多く、彼らを見ていると日本もまだまだ捨てたものではないと感動する。
こうした人たちと一緒にいると、本当に自分の中の人間性が取り戻せる。そのせいか、最近はそちらに引きずられることも多くなって、アンダーグラウンドから離れ気味になっていたのは否めない。
しかし、そろそろ私もアンダーグラウンドに戻るときがきている。
私は社会の底辺にこぼれ落ちて生きている女性が好きだし、身体を売って必死で生きている女性に今でも共鳴する強い感情がある。どこにいても、社会の闇で自己破壊的に生きている女性から目が離せない。
彼女たちの中には、表社会の立派な人たちに匹敵するくらいの頭の回転の良さや、潜在能力を持っていることに気づくこともある。しかし、彼女たちはそれを活かすことができない。その理由は、だいたい共通している。彼女たちは自己否定があまりにも強すぎるのだ。
先日、歌舞伎町でひさしぶりに病み界隈のグループに話しかけ、そのときに東京近郊からきた女の子と路上で数十分ほど他愛のない話をする機会があったのだが、彼女もそうだった。少し話しただけで彼女の受け答えに知的能力の高さを感じた。
「オーバードーズ、してます」というのだが、何をしているのかと聞くと「デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、DMXが好きですね!」と、うれしそうに答えた。
だいたいの女の子は単に「メジコン」とか「DMX」とだけ答えるが、彼女はデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物といった。睡眠薬にも詳しくて、いろんな薬の名前をいくつも列挙して無邪気に笑っていた。