タイ・バンコクの真夜中。まだ20代前半の彼女は、髪は真っ赤、上着は原色の黄色、ミニスカートにハイヒールという恰好をしていた。
顔には化粧を塗りたくり、これ以上にないほど派手で、態度もふてぶてしかった。
真夜中のバンコク・スクンビット通りでは、同じような恰好の女性たちが山ほどいる。しかし、彼女のけばけばしさは群を抜いているように見えた。
彼女は世の中のすべてに反抗しているようにも見えたし、世の中のルールなどまったく眼中にないように見えた。
しかし、タクシーの窓の外に寺院がショーアップされているのを目にしたとき、彼女はそっと手を合わせて、長く静かな合掌(ワイ)をした。