◆デリア。暗闇の中でじっと私を見ていたベンガル女性

◆デリア。暗闇の中でじっと私を見ていたベンガル女性

インドの売春地帯で知った顔が増えてくると、あちこちの女性と話し込むことも増える。女性たちも、異国から来た男に慣れてくると、暇つぶしにちょうどいいと思うのか、帰ると言っても帰してくれない。

話の内容は、どの女もほとんど決まっている。他の女の悪口か、自分はいかに金がなくて生活がつらいかという愚痴である。そして、最後には「金をくれ」「バクシーシ」となる。

どうしても男が金を出さないと、金切り声を上げて、罵ったり泣き落としにかかったりする。他の国の人たちのように最後まで談笑というわけにはいかない。

しかし、金がないと言いながら泣いて、この世の終わりのように嘆く女性も、翌日になると昨日のことはまったく忘れてしまったかのように笑顔を見せる。

他の女性の悪口を言って、「あの女は嫌いだ。絶対に話したくない」と言っていた当事者とも仲良く口を聞いているので面食らう。昨日の話は嘘だったのか……。

いや、そうではなくて、そのときどきの感情で話し、天気のように変わってしまう気まぐれな気持ちが口に出ているのだろう。

皮肉なことに、一貫性がないという現象だけがインドでは一貫している。辟易すると同時に、彼女たちの強烈な個性に魅入られ、ついには離れられなくなる。

女性だけではない。老人もまた話が好きだ。ある老人は自分を「イスラム教徒で、カシミールから来た」と言った。

本当かどうかは分からないが、この売春地帯にはイスラム教徒も多くいるのは他の老人たちのイスラム風の出で立ちを見ても明らかだった。威厳はあるが、長く生き抜いてきたがゆえの狡猾さのような表情も時おり見せた。

デリアといつ出会ったのか覚えていない。

コルカタの「ムンシガンジ」という売春地帯をさまようようになってからというもの、いつも彼女はまとわりついて来るようになっていた。

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア インド・バングラデシュ編』にて、全文をお読み下さい)

『ブラックアジア・インド・バングラデシュ編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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