◆売春地帯で、初めてアシッド・アタックされた女性を見た日

◆売春地帯で、初めてアシッド・アタックされた女性を見た日

売春地帯の奥に、ひとりの女が立っていた。クリーム色のパンジャビー・ドレスを着てグレーの模様の入った布を肩にかけ、人を避けるようにして立つ彼女の姿は、妙に薄気味悪い雰囲気を漂わせていた。

歳は20歳を過ぎたくらいだろうか。異様に痩せていて、私を見つめる目は無関心に近かった。

ただ黙って立って、売春地帯を行き来する男たちを見つめているのだが、心はどこか他にある、いや心というものは、すでになくなってしまったかもしれない……そんな風に感じさせる女性だった。

誰も彼女に話しかけないし、彼女も誰とも話そうともしなかった。精神的に壊れてしまった人だと思った。

だから、この売春地帯を訪れた3度目か4度目のある日、彼女が「ハロー」と声をかけてきたときはひどく驚いた。通りかかる人を「こんにちは」と呼びとめられるほど彼女の精神が普通だったとは思えなかったからだ。

しかもそれが英語だったということは、彼女が私を外国人だと認識するだけの思考能力もあるということだ。

彼女が他の女たちと違うように見えたのは、やはり全身から漂わせる厭世的な雰囲気もあったのだが、インド圏の女性にしては珍しく短めの髪をして、前側を真っ赤に染めていたからかもしれない。

白粉の内側から汗が吹き出て、目の下の黒い縁取りは滲んでいた。目の下の黒い縁取りは、インド圏以外の国の人間はめったに行わない化粧方法だ。もし行うとすれば、自分に悪魔的な雰囲気を与えたいようなときだろう。

しかし、インド圏の売春地帯では、このような目の装飾が珍しくない。彼女はついでに唇もほとんど黒に近い赤を塗っていたので、そう言った意味でも近寄りがたいものがあった。

しかし、外見が他人と違うことくらいは、私にとって特に大した意味はない。彼女に距離感を感じたのは……

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア インド・バングラデシュ編』にて、全文をお読み下さい)

『ブラックアジア・インド・バングラデシュ編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

ブラックアジア書籍カテゴリの最新記事