夢を見ないジャニス。他人を拒絶するような態度と性格

夢を見ないジャニス。他人を拒絶するような態度と性格

フィリピン女性は誰もがラテン系で、明るく楽しく陽気だというイメージがある。しかし、もちろんそうでない女性もいる。

ジャニスは、まさにそうだった。真夜中の世界で生きているのに、男に見つめられているのを分かっていて無視したり、自分が相手を見つめるときは、遠回しに見つめたりする。

堕ちた女性は、仲間の冗談にいちいち怒ったり根に持ったりしない。しかし、ジャニスは自分が仲間の卑猥な冗談のネタにされたら、本気で怒る。

変わっていた。

売春地帯に堕ちてきたというのに、根が真面目すぎて空転している雰囲気があった。堕落したこの世界にそぐわず、孤独を感じさせた。

まるでこの世界に馴染んでおらず、プライドが高く、寂しがり屋だった。ジャニスはそんな不思議な女性だった。

彼女がいたのは、フィリピンの堕落地帯アンヘレスだ。大勢の女性に混じって、彼女もステージでビキニで踊っていた。髪のボリュームは多く、その黒髪はふわりとうしろに束ねられて無造作だった。

端正だが正統派の美しさではない。身体の均整は取れている。痩せているのでも太っているのでもなく、筋肉質なところが目を惹いた。女らしい身体というよりも、競技者《アスリート》の身体に近い。近寄りがたい雰囲気さえある。

その体型からして普通の女性とは、少し違う感じがした。

そんな彼女をじっと見つめていると、突然目が合った。彼女はすぐに目を伏せて、それからずっとこちらを見なかった。

自分の立っているポジションを少しずらして、私の視線に壁を作ることさえした。それはあたかも自然なポジション移動のように見せかけていたが、私は気がついていた。彼女は見つめられたくなかったのだ。

二度とこちらを見なかったのは、もちろん無言の拒絶である。しかし、私が嫌いだというよりも、誰にも見つめられたくないし、触れられたくないという風に見えた。隣にいたウエイトレスにステージで踊っている彼女を指さして「彼女は何という名前なんだい?」と尋ねてみた。

「ああ、彼女ね。ジャニスよ」

ジャニスはとうとう最後までこちらを見てくれることはなかった。踊り終わると、わざと私からまったく反対側の方に向かい、他の女たちと談笑している。しかも、こちらに背中を向けて、完全拒否の体勢を……

(インターネットの闇で熱狂的に読み継がれてきた売春地帯の闇、電子書籍『ブラックアジア フィリピン編』にて、全文をお読み下さい)

『ブラックアジア・フィリピン編 売春地帯をさまよい歩いた日々(鈴木 傾城)』

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