時々、トゥーというカンボジアの売春地帯にいた可愛らしい娘のことを思い出して、不覚にも涙することがある。
純粋で、健気で、弟思いだった彼女は、嵐が来れば吹き飛びそうなプノンペン北部トゥールコック地区の、粗末なバラック小屋で暮らしていた。
彼女は売春地帯に売り飛ばされた女性だった。
私は柄にもなく、何とか彼女を救い出したいと思い、いったいいくらで売り飛ばされたのかと彼女に尋ねた。そのとき、愕然としたのだった。
彼女は、自分がいくらで売られたのか分かっていなかった。また、彼女は計算ができなかったので、今までどれくらい稼いで、あとどれくらい働けば解放されるのかも、分かっていなかった。
彼女は自分の人生で起きていることが何ひとつ見えていなかったのだった。(バイバイ・トゥ。置き去りにしてきた彼女を思って慟哭する)