以前、シンガポールにいた頃、焦げ臭い空気がうっすらと流れてきて、大気が霧で曇っているようになっているのに驚いたことがあった。ヘイズ(煙害)だった。
焼け焦げた臭いが立ちこめて、ずっと嗅いでいると嗅覚がおかしくなってくる。
インドネシアの焼畑農業で出た煙が、風に乗ってシンガポールに到達しているのだった。風に乗って煙がシンガポールに到達するというのだから、インドネシア側で、相当な面積が焼かれているのは間違いない。
ヘイズについてはそのときは何とも思わず、こんなこともあるのだと思っただけだった。
それから1年後、インドネシアのカリマンタン島(ボルネオ島)のシンカワンという場所に入ったとき、ヘイズの脅威を思い知ることになった。
カリマンタンに入ったときから、焼けるような熱い空気の中に焦げ臭さが含まれていたが、シンカワンに向かうバスの中から外を見ると、あちこちでジャングルが野焼きされていた。