「痛み止めになる」「咳もとまる」「頭痛も消える」「ケガにも効く」「痛風にも効果がある」「睡眠薬にもなる」と喧伝され、実際に猛烈な効果を発揮し、人々が「もっと欲しい」と切望した「夢の薬」があった。
さらにこの薬は、上記の効果以外にも「心から本気で幸せな気分になれる」という効果もついていた。
この薬は「阿片《あへん》」と言った。この多幸感を手軽に味わえる阿片は全世界で需要があって、これを世界中にばらまいていたのが他ならぬ大英帝国であった。(ブラックアジア:イギリスが史上最悪の「ポン引き国家」であった事実と人類のドラッグ禍の歴史)
阿片の陶酔は危険なまでに強く、虜《とりこ》になっていった人たちはすべてを投げ打って阿片に狂うようになった。満州に建国された清はこの阿片によって人心が急激に荒廃し、阿片貿易を拒絶したことによって大英帝国と戦争になって敗退した。
「陶酔」を運ぶ阿片は当時のイギリスの最重要輸出品だったのである。
人々は今も昔も陶酔を求めている。今では阿片をさらに精製して科学的合成によって作られたのがヘロインなのだが、今もヘロインは覚醒剤と並んでヘヴィードラッグのひとつとして莫大な依存者を生み出している。
それほど人々は陶酔や多幸感に飢えているということでもある。
しかしながら、人々は阿片やヘロインが最終的には人間を依存で破滅してしまう元凶になってしまうことを学習している。だから、もっとマイルドな方法で多幸感が得られないかと考える。
それが、アルコールであったり、マリファナであったり、いくつかのマイナーな処方薬であったりする。最近では「幸せホルモン」は脳内のオキシトシンが作用しているというので、「オキシトシン経鼻スプレー」を使う人もいる。
しかし、こうした薬物に頼らず、自然な方法で陶酔や多幸感を得られないだろうかと考える人も多い。ドラッグの引きずり込まれるような陶酔とは違うが、自然で心地良い、そして甘酸っぱい気分になるような陶酔を味わう方法はある。