犯罪者が社会保障費を食い尽くしていけば、私たちに残るカネなど1円もない

犯罪者が社会保障費を食い尽くしていけば、私たちに残るカネなど1円もない

ニセの弱者は、巧妙に弱者になりすますことによって世間から同情される。弱者であると主張することによって批判されにくくなる。批判どころか、人々を騙して同情すらされる。よりによって世の中で最もタチの悪い人間が、無垢で純真な人たちに保護され、守られる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

国が豊かになると奇妙な「なりすまし」が増えていく

犯罪の基本は「なりすまし」だ。犯罪者は状況によって、次々といろんなものになりすます。自分の本質を隠し、現実社会で自分ではない何かになる。

もっとも分かりやすいのは「振り込め詐欺(オレオレ詐欺)」である。高齢者に電話をかけ、息子などになりすまして「事故を起こしたからすぐに金を振り込んでくれ」だとか「金を払わないと逮捕されるから金を払ってくれ」と言って、高齢者を動揺させ、急かせて金を払わせる。

高齢者は騙されやすいのか? そんなことはない。投資詐欺は若者から中高年まで片っ端から騙す。

犯罪者は「自分はモルガン・スタンレーで働いた経験があって、投資の天才で資金を1年で二倍にする才能がある。今から投資すれば、年間100%の配当を出す」みたいな言い方で身分を詐称し、投資家から資金を集めて逃亡する。

犯罪者は、騙せるのならば国でも騙す。国や社会が脆弱な時は自分が弱者であっても強者に「なりすし」する。なぜなら、強者になりすますことで力や利権をかすめ取ることができるようになり、利益を得る側になれるからである。

しかし、国が豊かになって福祉が充実するようになると、今度は奇妙な「なりすまし」が猛烈に増えていくようになる。犯罪者が「弱者になりすます」のである。

犯罪者は自分で何か生み出さない。他人に寄生し、他人から盗むことで生きていこうとする。「なりすまし」するのは、当然のことながら、他人に寄生し、他人から盗むためである。

そんな中で、国が豊かになると、なぜ犯罪者が喜んで弱者になりすますのか。もちろん、社会福祉に寄生し、そこから延々とカネが引き出せるからである。豊かな国は福祉が充実している。

つまり、豊かな国では弱者を装えば得するのである。

ブラックアジアでは有料会員を募集しています。よりディープな世界へお越し下さい。

私たちは弱者として生まれ、弱者として死んでいく

世の中は二種類の弱者がいる。「本物の弱者」と「ニセの弱者」である。本物の弱者は、絶対に見捨ててはいけない。

世の中には、病気になった人、子供を抱えて配偶者がなく孤立した女性、障害を持った人、人生がうまく行かず高齢になって苦境に落ちてしまった人、他にも不幸な問題があって苦境に落ちて困っている人たちが大勢いる。

こうした弱者を見捨てることはできない。彼らを保護し、生活を手助けすることは社会の義務である。それは私たちにとっても、役に立つ。弱者を助けるというのは、すなわち自分が弱者に落ちた時に助かるということである。

こうした社会のどん底《ボトム》に落ちてしまった人たちの話をすると、「自己責任だ」とか「要領が悪すぎる」とか「自業自得だ」等々、見放すような発言をする人たちも多い。

そうだろうか。誰でも病気になる。誰でも失敗する。誰でもリストラに遭う可能性もある。誰でも運の悪い人生に落ちる可能性がある。自分が弱者に落ちることはないと思っている人はどうかしている。

人は誰でも弱者になる。

事故・災害・病気・トラブルに巻き込まれると、誰もが一瞬にして今までの安定を失う。どんなに運が良い人でも、100%歳を取る。ゆっくりと老化していき、弱者になる。私たちは弱者として生まれ、弱者として死んでいくのである。

弱者を助ける社会が構築できていると、自分が弱者になった時も絶望しなくてもいい。私たちが作り上げた社会は、すべて自分に返ってくる。

国が豊かになっていくと、どこの国でも福祉を充実させていく。そうすることによって、たとえ誰かが一時的に困難に落ちても再起することが可能になる。自分が困難に落ちても助けてもらえる。

「本物の弱者」を決して見捨てず、むしろ深い愛情を持って支援していくのは当然のことだ。それは人間として絶対に必要なことなのである。

ところが、犯罪者どもはそこに目を向ける。

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

世間を騙しながら自分だけを利するようにする

障害者手当も、生活保護も、年金も、弱者保護には必要不可欠な制度だ。一時的であれ、恒久的であれ、それによって弱者も人間としての尊厳を捨てることなく、きちんと生きていくことができるようになる。

ところが、犯罪者はそこに目をつけて、自分が弱者に「なりすまし」する。障害者のフリをしたり、失業者のフリをしたりして、大切な税金をかすめ取る。そうやって「なりすまし」して、世間を騙しながら自分だけを利するようにする。

それが深刻なのは、そうすることによって本当に保護が必要な人が保護が受けられなくなり、さらに制度そのものが「悪用されるなら無くしてしまえ」という声で存続の危機に陥るからだ。

悪人どもによって制度崩壊が起きる。

悪人によって、本物の弱者が切り捨てられる。本物の弱者を保護すると同時にニセの弱者を切り捨てなければならないのは、ニセの弱者を放置することによって、本物の弱者が追い詰められるからだ。

すでに生活保護にも障害年金にも、ニセの弱者が群がっている。

このままでは制度崩壊を起こす。ニセの弱者を放置していると弱者救済の制度が疲弊して機能しなくなり、私たちが本当に弱者になった時、社会にも見捨てられることになる。

しかし、この問題を解決するのは本当に難しい。なぜならニセの弱者を攻撃することは本物の弱者を攻撃していると思われて、批判する人が批判されるということになり得るからだ。

福祉が充実した社会では「ニセの弱者」が最強の強者なのである。彼らは福祉に寄生し、弱者の立場を身にまとって自分たちに逆らう者を差別主義者として糾弾することができるようになる。

これを推し進めたのが、貧困ビジネスである。生活困窮者を集めてタコ部屋に放り込み、生活保護を受けさせ、その大部分をピンハネする。卑劣なビジネスなのだが決して稀なビジネスではない。むしろ、この世にはびこっていると言ってもいい。

インドの貧困層の女性たちを扱った『絶対貧困の光景 夢見ることを許されない女たち』の復刻版はこちらから

これが、「なりすまし弱者」のやっていること

危険で卑劣な「なりすまし弱者」は、以下の過程で生活保護や障害年金などの社会福祉に個人や集団で取り憑き、そして延々と税金を貪っていく。

  • 自分が弱者であることを声高に主張する。
  • 徹底的に権利を要求する。
  • 各所からカネをせびる。
  • 正体を暴く者を差別主義者として糾弾する。
  • 邪魔する者は裁判で黙らせる。

これが、「なりすまし弱者」のやっていることだ。世の中にはウブな人も多く、「なりすまし弱者」がいると知っている人はまだ少ない。

これを批判すると弱者を批判する人が逆批判されるので、制度が悪用されていても誰も声を上げない。そのため、ニセの弱者のことを知らない人がいたとしても仕方がない。現場にいる人は分かっているのだが、本物の弱者を救済するのに忙しいので黙っている。

誰も「なりすまし弱者」に関わってトラブルに巻き込まれたくない。だから、豊かな国では社会福祉に寄生する悪人が大量に出現し、制度を悪用し続ける。

ニセの弱者は、巧妙に弱者になりすますことによって世間から同情される。弱者であると主張することによって批判されにくくなる。批判どころか、人々を騙して同情すらされる。

よりによって世の中で最もタチの悪い人間が、無垢で純真な人たちに保護され、守られる。逆に彼らが悪人だと分かっている人間が糾弾され、罵られる。

日本社会は「なりすまし弱者」に脆弱な社会である。ニセの弱者に大量寄生されて社会の重要な基盤が崩れ去っていこうとしている社会である。

日本社会は「ニセの弱者」と「弱者ビジネス」のあぶり出しができるか、それとも食い尽くされて瓦解していくかの瀬戸際になる。

犯罪者どもが社会保障費を食い尽くしていけば、それこそ私たちに残るカネなど1円もない。「なりすまし弱者」の横行は本物の弱者を追い詰め、日本の社会保障費を食い潰し、最終的には日本社会を崩壊させることになる。

ボトム・オブ・ジャパン
『ボトム・オブ・ジャパン 日本のどん底(鈴木 傾城)』

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

事件カテゴリの最新記事