生まれて初めて全身黒ずくめのアラブ女性を見たのは、バンコクだった。
グレースホテル近辺は昔からアラブ人が集まる場所だったのだが、熱帯の蜃気楼の中を、あの黒ずくめのアラブ女性が悠然と歩いているのを見て、あの女性たちの衣装の奥はどうなっているのだろうかとエキゾチックに思ったものだった。
かつて、それは神秘だった。顔さえも見せてくれないのだから、その肉体がどうなっているのかなど、アラブ女性と関わりのない人間には一生見ることができないものだった。
しかし、それは10年前までの話だ。インターネットに入って時代が変わった。携帯電話にカメラが搭載されるようになって、時代は加速した。
そして、スマートフォン時代になった今、もうアラブ女性は神秘ではない。インターネットでは彼女たちの剥き出しの肉体が夥しく見ることができるようになり、あの黒衣の中はこんな女性たちだったのかと感慨に耽ることができる。
隠されたものは、今や完全に剥き出しになっている。