風俗嬢はしばしばスカウトを使って新しい店を探す。私がインタビューした何人かの女性もまたスカウトを通してデリヘル店に勤めていた女性だった。スカウトを通すと、女性は売上の10%はスカウトに取られるので収入的には損する形になる。
それでも風俗嬢の何人かはスカウトを通す。
私が話した女性は「スカウトの男性があまりにも必死だったからかわいそうに思って彼に頼むことにした」ということを言っていたのだが、「かわいそう」だけで自分の収入の10%を差っ引かれるのを許容する女性はいない。
具体的に風俗嬢がスカウトを通すのはいくつか理由がある。それは女性は面接に行かなくても、店に電話して探し歩かなくても、それこそ何もしなくてもスカウトが必死で自分に合う店を探してくれるので店を探す時に楽なのだ。
さらに、勤めている時に何か問題があったら、スカウトが話を聞いてくれる。愚痴を何時間も聞いてくれることもあれば、店とトラブルがあった時にはスカウトを通して解決を模索することもできる。自分が言いにくいことはスカウトに言わせる。
あるいは店を辞めて次の仕事を見つけたい時も、スカウトを自分のアシスタントのように使うこともできる。
すべてのスカウトが自分に親身になって動いてくれるわけではない。ただ搾取するだけのスカウトもいれば、違法風俗やブラックな店を敢えて紹介することもある。
店に問題があっても店の方の肩を持って女性に辞めさせないようにしたり、中にはスカウト自身が意味もなく身体を求めたりすることもある。スカウトを通せば面倒とトラブルが減ると思って任せても、むしろスカウト自身がトラブルだったりするのだ。
スカウトを使うというのはケース・バイ・ケースなのだ。スカウトに10%を払ってメリットを享受できるかは運不運も大きく左右する。
ところで、このスカウトの抱える凄まじき大きな闇を風俗嬢たちはたぶん何も知らないと思える。それは、どういうものなのか……。