書籍『絶対貧困の光景』で10年前に知り合っていた物乞いと再会したことは書籍の中で書いた。
彼女たちは何も持たないまま暮らしているのだが、何も持たない中で、いろんなものを巧みに使って日常を暮らしていた。
私たちはシャワーを浴びた後、耳の中が濡れているときは綿棒を使うが、彼女たちはそんなものは買えない。どうするのかというと、道に落ちているカラスの羽根を利用して、それを綿棒替わりにして使っているのである。
インドには日本よりも小型で栄養状態が悪そうなカラスが山ほどいて上空を舞っているのだが、あちこちに羽根を落としていく。その羽根は芯がしっかりしてまわりの羽毛はとても繊細だ。
私も1本もらって綿棒として使ってみたが、本当にこれがあれば綿棒など買わなくてもいいような気にもなった。カラスの羽根は自然が生み出した綿棒だったのである。
なるほど、こうやって生活を乗り切るのかと感心した。