5分先のことであっても世の中が100%見通せるのであれば世の中は楽勝だ

5分先のことであっても世の中が100%見通せるのであれば世の中は楽勝だ

「1999年7月に恐怖の大王によって人類が滅亡する」というノストラダムスの予言の年、私はカンボジアで堕落にまみれて日々を過ごしていた。(アマゾン:スワイパー1999〜カンボジアの闇にいた女たち

当時の私は、自分がHIVに感染するのではないか、強盗に襲われるのではないか、汚職警官に逮捕されるのではないか、夜総会でぼったくられるのではないか、と言う目の前の危機の方が切実で、ノストラダムスどころではなかった。

そして、世界滅亡だとかノストラダムスだとか騒いでいる人は、単に娯楽として「それ」を語っていると観察していた。

『ノストラダムスの予言』でも新約聖書の終末の記『ヨハネの黙示録』もそうだが、「決められた未来があってその道筋に沿って歴史が動いている」という考え方は合理的ではない。その考えは今も変わっていない。

そういったものを狂信している人に私が何かを言うことはないが、自分がそこに与することは決してない。

結局1999年に世界は滅亡しなかったし、2012年に世界が終わるという古代マヤ文明の暦の後も暦(こよみ)は続いているし、日々の暮らしに文句を言いながら、私たちはまだ生きている。私にとっては、それがすべてだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

将来を見通せる人間はどこにもいない

将来を断言する人は多い。しかし、この世で将来を見通せる人間はどこにもいない。5分先のことであっても世の中が100%見通せるのであれば、その人はそれだけで超人と言われるようになる。

5分先の相場が分かれば取引にことごとく打ち勝てる。5分先の事件が分かれば、先回りして準備できる。5分先に誰がどこでトラブルに巻き込まれるのか分かっていれば忠告もできる。

5分先の災害が読めればそれだけで予言者になれる。

実際にはそんな人は存在しない。これが意味するのは、世の中について「誰も5分先のことですらも」正確な予測できないということだ。

流れを読んで、「だいたい、こうなる」というのは推測することはできる。また、過去の経験則で「今回もこうなるだろう」と直感することもできる。ある程度、予測しやすい事象があるというのは事実だ。

しかし、それでも世の中は何も決まっていないのだから、不意に何かが起きるとすぐに予測は外れていく。

世の中が時計のように正確に読めないというのは、当たり前のことなのだ。将来は何も決まっていない。どれだけ有能で、どれだけ将来を見通す能力があっても、どれだけ実務能力があっても、自分の人生は思う通りにはならない。

そう考えると、世の中が何らかの陰謀や神の預言によって決まった結論に向けて着々と進んでいると考えることの愚かさが分かる。世の中は誰かの思惑を無視して突拍子もない方向に動いていく。

だから、市井の予言者は富裕層でも何でもないし、政治の要職にも就いていないし、尊敬を集めているわけでもないし、人望を集めているわけでもない。

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その予測すらも当てにならない

世界に君臨する国家アメリカの、そのトップにある大統領ですらも、未来を予測することができない。

アメリカが世界を「こうしたい」という計画があって、優秀な人間たちがそれを実現するために邁進したとしても、やはり実現できないものも多い。予期せぬ事件や事態が重なって、計画を立てた時とはまったく違う状況になっていく。

妥協を余儀なくされ、末節の部分の一部は挫折し、一部は延期され、「こうしたい」という計画は最初とまったく違う形になってしまう。

だから、重要なのは「世の中を見通す能力」ではないことに気が付かなければならない。そんな能力はどんな努力しても身につかない。

世の中で起きていることを分析して予測を立てることはできる。大雑把に「こうなるかもしれない」と考えることができる。

世の中は因果関係によって起こるべくして起こることを予測することはある程度可能だから、それを積み上げれば「大雑把」には何か起こるのか分かる事象はゼロではない。しかし、決してその通りにはならない。

経済アナリストが数十の統計を駆使して何かを予測しても、ほとんど当たっていないのを見ても分かる通りだ。金利動向ですらも「正確」に分からないし、常にサプライズ(予想外)が起きる。それは読めない。

だから、私たちが求めなければならないのは、間違えても「世の中を見通す能力」ではないのである。

正確に予測しようとしても必ず外れるのだから、世の中がどうなるのかは、「大雑把に予測する」くらいしかできない。さらに言えば、「その予測すらも当てにならない」くらいの姿勢でいるしかない。

だとすれば、その代わりに私たちが求めなければならない能力は何だろうか。

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不意打ちのダメージから立ち直る能力

予測することは決して悪いことではない。物事の多くは「だいたいこうなるのではないか」という予測の元で計画を立てるからだ。それが当たろうが外れようが、だいたいこうなるのではないかという予測がないと計画は立てられない。

しかし、予測は正確ではなく予想外はいつでも起きるので、現実を見る人間が最も必要としているのは、「想定外が起きても、そこから態勢を立て直す能力」「現実を見て行動を修正する能力」の方だ。

不測の事態に備えて何らかの準備をすることもできるが、世の中はその準備すらも上回る事件がしばしば起きる。だから、自分の想定以上のことが起きても、そこから事態を立て直す能力が必要になって来る。

この「不意打ちのダメージから立ち直る」というのが重要なのである。

想定外から事態を立て直す能力というのは、不意打ちを食らった瞬間であっても、冷静に自分の身に起きていることを客観的に見つめて、その時点でベストの選択ができる能力だ。

予測できない打撃を食らうと、その瞬間に今までの順風が吹き飛んでしまう。ダメージがあまりに大きいと、今まで持っていた楽観も、予定も、計画も、何もかもが吹き飛んでしまう。

それこそ人生における絶頂期にあるときに、突如として予測もしなかったダメージを受ける人すらもいる。最も幸せな瞬間が一瞬にして崩れる。

世の中が予期できないということは、誰もがこの「打撃」を味わうということである。どんな有能な人間であっても、どんなに慎重な人間であっても、この不意の打撃を避けることができない。

これは避けられないものだから、準備することすらも不可能だ。準備できるというということは、予測できるということだ。予測できないというのは、準備すらもできないということなのである。

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七転八起が示唆するもの

もちろん先を見通す能力を磨くのは無駄ではないし、ある程度の予測能力があっても邪魔にはならない。

しかし、無駄に正確な予測をしようと悪戦苦闘するよりも、不意に受けたダメージから回復する能力の方を重要視した方がより現実的である。

日本には「七転八起」という言葉がある。7回転んでも、8回起きればいいという不屈の姿勢を表現した言葉だ。この人々を鼓舞する四字熟語は、人生を生きていく中では7回も8回も不意打ちのダメージを受けるということを示唆している。

「何度も何度も立ち上がれ」というメッセージの前に、何度も何度も不意打ちを受けるという現実があるということをそこから読み取らなければならない。

転落は必ず人生にある。

だから、いったんは泥にまみれても、したたかに立ち上がる「能力」が必要になってくる。受けたダメージを客観的に見つめて、そこからいかに回復していけるか。失ったものを数えるのではなく、いかにして立ち直るのか……。

そこに焦点が当たっていると、どん底から立ち直るきっかけをつかみやすい。

「態勢を立て直す能力」を磨くというのは、何が起きるのか分からない世の中で、自分なりにサバイバルできるようにするということでもある。

回復した上に前よりもうまくいけば、それこそ「転んでもただでは起きない」を地で行くことになる。誰かに自分の将来を占ってもらうよりも、この受けたダメージから回復する能力を磨いた方がよほど役に立つ。

5分先のことであっても世の中が100%見通せるのであれば世の中は楽勝だが、私たちの誰もがそんな能力を持ち合わせていないし、そんな能力を手に入れることも非現実的な話なのだ。

だから私は、「こうなるだろう」と思いつつもそれを過信せず、不意打ちが来てもしたたかに生き残れるようにしている人の方を評価しているし、そうした人たちから生き残る手法を吸収したいと思っている。(written by 鈴木傾城)

ヨハネの黙示録の終末論を描いた世界。世界の終わり。「決められた未来があってその道筋に沿って歴史が動いている」という考え方を今でも多くの人が信じている。

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