イギリスのEU離脱が2019年3月29日に行われ、世界は大混乱に落ちるか?

イギリスのEU離脱が2019年3月29日に行われ、世界は大混乱に落ちるか?

イギリスのEU離脱は2019年3月29日午後11時に行われると決まっている。

イギリスがEU(欧州連合)を脱退するか残留するかの国民投票をしたのは2016年6月23日だったが、大番狂わせでEU離脱に決まった。あれからイギリス国内では離脱派と残留派が国を分断するかのように激しく対立し合って今もなおイギリス国内は揺れている。

イギリスがEUを脱退することになると、イギリス自身がEU(欧州連合)という自由貿易圏から抜け出すことになるのだから、これはイギリスの多国籍企業にとってはビジネスが制限されることを意味する。

また、今後はEUがどのような展開を向かえるとしても、イギリス自身は蚊帳の外におかれるわけで、政治的な影響力も減退する。

つまり、政治・経済の観点から見ると、イギリスのEU脱退はマイナスの影響が強い。これは、国民投票をする前に、イギリスのキャメロン前首相が何度も繰り返して国民に訴えていたことである。

今もなお「離脱は問題が多い」と連日のように報道され、イギリス国民の一部は2019年3月29日の「審判の日」に怯えて食料備蓄をしたりして備えている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

多国籍企業とグローバル化の敗北

イギリスの多国籍企業にとっても、イギリスのEU脱退は大きなビジネス的災厄である。今後、イギリス製品にはEU圏内で関税がかけられることになる。これは製品の価格競争力が失われることを意味する。

また、イギリスも大量の移民・難民を国内に流入させていたのだが、これによって多国籍企業は安い労働力を手に入れてコスト削減に邁進していた。

イギリスがEUを脱退するのであれば移民の流入もストップする。これによって、イギリス企業だけでなく「イギリス国内に製造拠点を持つ多国籍企業」は等しく危機に陥ることになる。

つまりイギリスのEU脱退は、まぎれもなく「イギリスの多国籍企業の敗北」であり「グローバリストの敗北」である。

事実、イギリスのEU脱退派の中には「我々は多国籍企業に勝った」と歓声を上げる人も多かった。それと同時に移民で埋め尽くされるような過度なグローバル化にもブレーキがかけられることをEU脱退派は願っている。

今まで怒濤の勢いで世界中を覆い尽くしていたグローバル化は、「貧困層を他所から連れてきて安く働かせ、自国の労働者の賃金も下げさせる動き」であることが、ゆっくりと普通の人々が認識するようになった。

賃金が下げられ、仕事が消え、わずかな仕事も低賃金をモノともしないで働く移民たちに取られていった。そんな現実を見て、一般の労働者は「グローバル化は自分たちを幸せにしない」ことを知るようになったのだ。

グローバル化は多国籍企業にとって都合が良いことでも、自分たちには不都合な動きであると知ったのだ。そのため、現在は世界中で人々がグローバル化に懐疑の目を向けるようになっている。

今、EU諸国で「反グローバル主義」が台頭し、既存政党を揺るがすようになっているのだが、いよいよイギリスの反グローバル主義者が、難攻不落と思われていたEUという「グローバル化」を揺るがすことに成功した。

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もっと重視したいものがあった?

ヨーロッパの支配階級(エスタブリッシュメント)はグローバル化を極度なまでに押し付けてきた。これに対して各国の国民は、エスタブリッシュメントに反旗を翻して「反グローバル化」の動きを鮮明化させていた。

フランスでは、以前からマリーヌ・ルペン率いる国民連合(前・国民戦線)が、ますます大きな影響力を広げている。

2017年の選挙には破れたが、フランスの支配者階級が送り込んだマクロン大統領は、今やイエローベスト運動で窮地に堕ちて、再び国民連合にスポットライトが当たっている。

EUの頂点に立っているはずのドイツでも、AfD(ドイツのためのもう一つの選択)という反EU、反グローバル化の政党が躍進している。オーストリアでも、オランダでも、ハンガリーでも、スウェーデンでも、ノルウェーでも、ギリシャでも、同じような反EUを標榜する政党が勢力を拡大している。

もはや、この動きが止まらない。

EU(欧州連合)というシステムは、ヨーロッパの普通の人々にとっては「グローバル化押し付け制度」に他ならない。そのため、グローバル化に疑念を持つようになっている人たちにとってはEUは当然のことだったのだ。

確かにEUという巨大な自由貿易圏から抜けると、経済活動は停滞し、政治的にも活力を失っていくことになる。一時的には国内も大混乱に見舞われることになる。

イギリスでも、事前にそうした警鐘が激しく鳴らされ、全世界のグローバル・メディアもイギリス人を思いとどまらせようとした。にもかかわらず、イギリス人の半分以上がEU脱退を選んだのだ。

イギリス人は「政治よりも経済よりも、もっと重視したいものがあった」ということだ。それは何だったのか。

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イギリス人の半分が望んだもの

イギリス人の半分が望んだもの。それはイギリスに溢れて問題を起こしていた「移民・難民の排除」である。

日本のメディアはほとんど報道してこなかったが、イギリスでも「移民・難民問題」は大きな社会問題を引き起こしていた。

ロンドンはインド系移民、アフリカ系移民、イスラム系移民でごった煮のような状態と化している。それを嫌って白人がどんどん郊外に逃げ、ロンドンは事実上、イスラム系移民に乗っ取られた都市のようになっていた。

2016年5月にはイスラム教徒の議員であるサディク・カーン氏が市長となっているが、これも投票者にイスラム教徒が増えたことから起きている現象である。

こうした「多文化共生」はグローバル・メディアでは異民族共存の美しい姿として描き出されていたが、実際には社会の底辺では激しい軋轢と対立と衝突を生み出していて、社会は混乱していく一方だった。

価値感が違うと共存できないのが現実だったのだ。

治安も悪化し、彼らが暮らす区域はスラム化し、凶悪犯罪も無差別テロも多発し、売春やドラッグと言ったアンダーグラウンドも拡散していた。

その上、2015年からは内戦で国家崩壊したシリアから大量の難民がヨーロッパに押し寄せるという現象まで起きて、こうした難民がイギリスにも到達していた。

これによって、古き良きイギリスを愛する国民の我慢の限界を超え、ついにEU離脱派が勝利するという番狂わせに向かっていったのである。

イギリスのEU脱退の背景にある「反移民・反難民・反グローバル化・反EU」の精神的な感情は、他のEU諸国もまた共有しているものだ。

メディアは今もなおイギリスがEUを離脱することで国がめちゃくちゃになると喧伝している。確かにイギリス国内は半分に割れており、このまま秩序なき離脱に突入するとイギリスは大混乱に見舞われる。

しかし、EUは安泰なのかと言えば、まったくの逆だ。イギリスの離脱を見て「我々も離脱だ」と叫ぶ国が現れていくとEUもまた大混乱する。2019年はアメリカと中国の貿易戦争による経済失速の他にもイギリスのEU離脱もまた大きな混乱を世界に与える可能性もある。

2019年は注意深く経済動向を見つめなければならない。(written by 鈴木傾城)

刻々と迫るEU離脱で国内をまとめきれずに窮地に落ちているイギリスのメイ首相。イギリス国内は半分に割れており、このまま秩序なき離脱に突入するとイギリスは大混乱に見舞われる。しかし、混乱に落ちるのはEUも同じだ。

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