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アメリカの作家エドガー・アラン・ポーの小説に『早すぎた埋葬』というものがある。
「全身硬直症」という持病を持った人が、ある時目が覚めると真っ暗で狭い場所に入れられていて自分が埋葬されたと恐怖する……という内容の小説だ。
この人は生前に、このまま昏睡した状態が長く続くと生きたまま土葬されると思い、「自分がそのような症状になっても絶対に早まって土葬しないでくれ」とまわりに頼んでいた。ところが、恐怖が現実になってしまった。
その『早すぎた埋葬』の恐怖を延々と描いたこの小説は1844年に書かれたものだが、今でも長らく読み継がれている。
当時の時代は土葬が当たり前で、ごく普通に誤診があって仮死状態の人が棺桶に入れられて埋められ、後で何らかの事情で掘り返すと、棺桶の内側で暴れて死んでいった遺体が多く見つかったのが報告されている。
今の先進国では医学が発達して「早すぎた埋葬」は遠い昔のフィクションとなったが、この当時は身近で切実で恐怖のシチュエーションだったのだ。
子供の頃、私はこの小説を読んで「自分が死んだら土葬だけはして欲しくない」と心から望んだものだった。