大阪の京橋駅は環状線と京阪本線が交差しているのだが、この京橋駅前コンコースには、いつも奇妙な女性がいることが知られている。
年齢は40代か50代あたりだと思われる痩せた女性だ。服は着回しているようだが、ホームレスではないのはホコリや汚れがついていないことや、真新しい靴を履いていることで分かる。
ただ、両腕や指先はまるで重度の日焼けをしたかのようにボロボロになっている。
彼女は午後になると、どこからかふらりと自転車でやってきて、京橋のJR駅側のコンコースの壁に100円ショップで売っているようなズタ袋を3つ持ってくる。
そのズタ袋の中には、今まで画用紙に書き溜めた「主張」がどっさりと入れられているのが開いた口から見える。
そして、画用紙を床に広げると、よく分からない「何かの主張」を書いた紙をいくつか並べる。そこに書かれているのは、まるで暗号のように意味不明だ。
私がいたときは、「換骨奪胎」「勝手に一人で決める」とか「近所。毎日、殺命令ヤマト」などと書いた紙を床に並べていた。脈絡はまったくない。
さらにこの女性は、その場で新作の主張を一心不乱に書き始めていた。痩せた身体を折りたたみ、うずくまったような姿勢で、一心不乱に「主張」を書いている。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)