電波系? 大阪・京橋で誰も理解できない主張をしている奇妙な女性

電波系? 大阪・京橋で誰も理解できない主張をしている奇妙な女性

大阪の京橋駅は環状線と京阪本線が交差しているのだが、この京橋駅前コンコースには、いつも奇妙な女性がいることが知られている。

年齢は40代か50代あたりだと思われる痩せた女性だ。服は着回しているようだが、ホームレスではないのはホコリや汚れがついていないことや、真新しい靴を履いていることで分かる。

ただ、両腕や指先はまるで重度の日焼けをしたかのようにボロボロになっている。

彼女は午後になると、どこからかふらりと自転車でやってきて、京橋のJR駅側のコンコースの壁に100円ショップで売っているようなズタ袋を3つ持ってくる。

そのズタ袋の中には、今まで画用紙に書き溜めた「主張」がどっさりと入れられているのが開いた口から見える。

そして、画用紙を床に広げると、よく分からない「何かの主張」を書いた紙をいくつか並べる。そこに書かれているのは、まるで暗号のように意味不明だ。

私がいたときは、「換骨奪胎」「勝手に一人で決める」とか「近所。毎日、殺命令ヤマト」などと書いた紙を床に並べていた。脈絡はまったくない。

さらにこの女性は、その場で新作の主張を一心不乱に書き始めていた。痩せた身体を折りたたみ、うずくまったような姿勢で、一心不乱に「主張」を書いている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

たった一度ですらも、こちらを見なかった女性

私は「すみません、これは何ですか?」と声をかけたのだが、彼女は振り向きもしてくれなかった。

画用紙では激しく主張しているのだが、彼女はまわりを気にすることはまったくないのである。ただ、じっとそれを書いている。

何十分もかけて彼女はじっとそれを書く。その間、私は彼女がこちらを見てくれるのではないかと思って待っていたのだがたった一度ですらもこちらを見なかった。

画用紙に手書きの文字を書き入れ、それを何度も何度もなぞって太字(ボールド)にして目立つようにしていく。そうした創作を凄まじい集中力でやっている。

見ているだけで疲れてきたので、私はその場を立ち去って数時間後に再び戻ってきた。すでに夕方の5時過ぎになっていたはずだ。

この頃になると、JR京橋駅からは定時で仕事を終えたサラリーマンやOLが増えて京阪電車に向かって歩いて行く姿が目に付くようになる。

昼間はうずくまるようにして一心不乱に「創作」に励んでいた彼女は、この時間になると無言で道行くサラリーマンやOLたちに向かって、自分の書いた奇妙な主張の画用紙を二枚持って、それを人々に掲げて立っていた。

道行く人々はすでに慣れてしまっているのか、それとも奇妙な女性が掲げる無意味な主張に異常を感じているのか、誰もまったく関心を寄せない。目をくれることすらもしない。

しかし、彼女は無言でその奇妙な「主張」を掲げ、いつまでもそこにいるのだった。

ブラックアジアでは有料会員を募集しています。よりディープな世界へお越し下さい。

「電波系」という存在と、京橋のこの女性のこと

大阪・京橋は面白いところだ。私は個人的にこの場所が気に入っている。(ブラックアジア:大阪・京橋。ヤク中のチンピラも集まる飲み屋の密集地域

この女性は何年も前から京橋駅にやってきて、画用紙で不思議な主張をしている。主張の牙城は京橋だが、他にも梅田や大阪駅近辺でも目撃されているので、大阪の北部一帯で活動しているようだ。

まったく何を主張しているのか分からないし、一日中そうやって活動しても一円も入ってこないのだが、この女性はそれを何年も続けている。

いったい、これは何なのだろうか……。

かつて、街のゴミを漁って出てきたものから興味深いものを紹介する「村崎百郎(むらさき・ひゃくろう)」という奇妙な作家がいた。

このサブカル系作家である村崎百郎が定着させた言葉に「電波系」というものがある。

「電波系」作家を名乗っていた村崎百郎は、皮肉なことに2010年に本物の「電波系」の男に刺されて殺されているのだが、この作家が広めた「電波系」とは何か。

「電波系」というのは、『荒唐無稽な妄想や主張を周囲に向かって公言する者のことを指す言葉』とウィキペディアに書かれている。(ウィキペディア:電波系

この電波系の項目で「2016年10月に大阪府京橋駅付近にて撮影」と説明書きがある写真を見てほしい。このビラはまさに京橋にいるこの女性が書いたものである。

彼女自身はまったく意図していないと思うが、彼女は「電波系」の筆頭であり、その「電波系」という異様な世界では存在が知られた女性だったのである。

世の中には、本当に不思議な人がいる。その主張とやっていることが社会常識から外れているという意味で、彼女は「普通」から遠くかけ離れている。なかなかインパクトの強い女性であるのは間違いない。

この女性は何年も前から京橋駅にやってきて、画用紙で不思議な主張をしている。主張の牙城は京橋だが、他にも梅田や大阪駅近辺でも目撃されているので、大阪の北部一帯で活動しているようだ。

現実感を見失うと、私たちはみんな一線を越える

強い「主張」があるのだが、話の前後に相関関係がない。こじつけや被害妄想や思い込みで「主張」そのものが支離滅裂になってしまう。

こうした人を電波系というのは、「電波が聞こえた」と本人がしばしば説明するからだ。

「宇宙人が電波で自分に語りかけてくる」とか「壁から電波が聞こえてくる」という人もいる。

携帯電話は電波を飛ばして遠くにいる人と話をするが、こうした電波が自分に直接語りかけてくるという妄想を本気で思い込む人もいる。

重度のアルコール依存やドラッグ依存の患者も、しばしば「壁から声が聞こえてきた」「自分の身体の中に何かが潜り込んで自分に話しかける」と幻聴を訴える。

まわりからは支離滅裂に見えても、本人の中では、「そうとしか思えないもの」なのである。京橋で何かの危機を訴えている女性もまた、そうなのだろう。

彼女を見つめ、主張を書き連ねた画用紙の文字を読み、道行く人々に必死で何かを訴えてもまったく理解されないその姿を見ながら、私は彼女と外界の境界線とは何かを考えた。

境界線は何で線引きされているのか。

じっとりと蒸し暑い空気の中で私が思ったのは「現実感こそが境界線だ」というものだった。現実感という強い意識が、物の見方、考え方、主張にあるのかないのか。それが彼女と外界の境界線になっているはずだ。

うだるような暑さの中で、私は冷たい水を買って飲み干す。そして、「現実感か……」としばし思う。この「現実感」というのは、誰でもふと見失うものであり、常に保てるわけではないものだ。

人は誰でもどこかでバランスを崩し、自分を見失い、そして時々「電波系」の世界にも足を踏み入れるものだ。現実感を見失うと、私たちはみんな一線を越えて異次元にいける。

京橋の彼女は不思議で自分の世界を持った女性だ。私は脈絡なく、ヘンリー・ダーガーを思い出した。(ブラックアジア:ヘンリー・ダーガーは部屋に閉じこもって何を生み出したか

彼女の世界は、ヘンリー・ダーガーに匹敵するものなのかもしれない。だから、私は彼女が気になっている。(written by 鈴木傾城)

 

京橋の彼女は不思議で自分の世界を持った女性だ。私は脈絡なく、ヘンリー・ダーガーを思い出した。彼女の世界は、ヘンリー・ダーガーに匹敵するものなのかもしれない。だから、私は彼女が気になっている。

この記事のツイッター投稿はこちらです

この記事を気に入って下さった方は、リツイートや♡(いいね)を押して頂ければ励みになります。

ブラックアジア会員登録はこちら

CTA-IMAGE ブラックアジアでは有料会員を募集しています。表記事を読んで関心を持たれた方は、よりディープな世界へお越し下さい。膨大な過去記事、新着記事がすべて読めます。売春、暴力、殺人、狂気。決して表に出てこない社会の強烈なアンダーグラウンドがあります。

一般カテゴリの最新記事