1897年から1917年までの20年、アメリカのルイジアナ州ニューオリンズでは「あの地域」と呼ばれる売春地帯があった。それがストーリーヴィル(Storyville)である。
ここは、アルコールとギャンブルとセックスが公然と渦巻く不浄の地域であり、普通の人たちは決して近づかない場所でもあった。
住民が「あの地域」と言ったのは激しい嫌悪と拒絶感を伴っており「行ってはいけない場所」という意味で使っていた言葉でもあった。
何しろ、当時のアメリカの道徳観は清廉潔白を旨としたキリスト教プロテスタントのピューリタン派が基盤である。ピューリタンというのは、その言葉自体に「清潔」という意味を内包している。
性的にも道徳的にも「清潔」であらなければならないと言われていた時代に「飲む・打つ・買う=酒・賭博・女」の悪癖3点セットを思いきり開放していたのが「ストーリーヴィル」だったのだ。
まさに当時のアメリカが生み出した最初で最大の「売春地帯」と呼ぶに相応しい場所だ。ところで、この道徳に厳しい時代になぜこんな場所が生まれたのか?