ISISが消えても暴力は沈静化せず次の暴力が世界を襲来する

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2001年9月11日、アメリカで同時多発テロ事件が起きた。

その後、すぐにウサマ・ビンラディンがテロの首謀者と断定され、アメリカはアフガニスタンを攻撃、それ以来この国は「暴力の地」となった。

さらに、当時のブッシュ米大統領は2003年に大量破壊兵器を所持していると断定してサダム・フセインのイラクをも攻撃する。以来、この国も「暴力地帯」と化した。

中東イスラム諸国は以後、暴力に次ぐ暴力に揺れてきた。私たちがもはや中東地区の暴力に関心を失った後も、この地では暴力が吹き荒れていたのである。

この暴力の波は中東全域に向かっていき、イスラム世界では恒常的な暴力が社会に深く根ざしていった。

暴力は際限のないテロを生み出し、イラクに踏み込んでいったアメリカは泥沼に陥った。

厭戦ムードが高まり、やがてオバマ大統領が2009年からアメリカの新しい指導者となって、アメリカの戦争狂いは収まったかのように見えた。

しかし、この黒人大統領が何もしないまま8年の任期を終えると、今度は「何をするのか分からない大統領」が誕生し、イスラエルや中東で対立の芽をせっせと植え付けている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

反体制派が国家を樹立して欧米に立ちふさがる

ドナルド・トランプ大統領は立候補当初から親イスラエル派であることを明言していた。このトランプ大統領は対立をも衝突をも恐れない。

トランプ大統領は今まで歴代大統領のすべてが避けていたエルサレム問題にも介入し、2017年12月6日には「エルサレムはイスラエルの首都である」と一方的に承認して、いよいよイスラムとの対立を鮮明化させた。

さらにイランの核開発の批判、そして2018年1月2日にはイランの現体制の強烈な批判と、次々とイスラム諸国を挑発し続けている。

こうした対立は、やがてイスラムの暴力がアメリカに向かうきっかけを作り出し、再びアメリカが巨大な軍事力で中東に舞い降りるシナリオをも検討されるようになっている。

イスラムの過激テロ組織と言えばISIS(イスラム国)だが、この暴力組織は元はと言えばアメリカが育てたものである。

シリアのアサド政権を激しく嫌うオバマ政権が、アサド政権を崩壊させるために現地の反政府組織を支援しているうちに、この反政府組織が超暴力化してシリアを暴力の渦に巻き込んだ。

そして、ISISはいつの間にか過激暴力でシリア東北部を制圧し、勝手に国家を樹立してしまったのである。

彼らは、かつてイラクで自爆テロ、外国人の拉致、公開処刑を繰り返して来た史上最悪の暴力集団の末裔だった。

アルカイダですらも「彼らは暴力的過ぎる」と袂を分かったほどの暴力主義者が、よりによってシリアからイラクにかけての広大な領土を制圧し、巨大な暴力集団となって欧米の前に立ちふさがるようになってしまった。

アメリカはイラクを統治できずに、10年以上も延々とイラクは「暴力地帯」だった。

そんな「暴力」の空気を吸い、「暴力」と共存しながら生きてきた男たちが、「暴力」を徹底行使することで生きるようになっていた。

生まれながらにして爆弾テロや銃撃戦が起きる世界で暮らしてきたのだから、彼らが「暴力」を行使することを人生のテーマにしたとしても何ら不思議ではない。

生まれながらにして爆弾テロや銃撃戦が起きる世界で暮らしてきたのだから、彼らが「暴力」を行使することを人生のテーマにしたとしても何ら不思議ではない。

イスラム圏では、「暴力」がモノを言う無法地帯

2017年、イラク各地で敗退していったISISは、やがてすべての陣地を失って歴史の闇に消えていった。しかし、これで中東の暴力は収まったわけではない。

ISISの残党は各地に小さな「暴力細胞」となって生き残り、あちこちで連続的にテロを引き起こしている。

2017年12月17日にはパキスタン南西部バルチスタン州で自爆テロ、25日はアフガニスタン首都で自爆テロ、27日にはロシア・サンクトペテルブルクで爆発テロ、28日には再びアフガニスタン首都カブールで自爆テロ、29日にはエジプトのカイロ近郊で教会襲撃テロ……。

ISISは死んだのではない。「散らばった」のである。

さらにISISを生み出したイラク・シリアでも不穏な動きがある。ISISの再結集だ。

ISISという巨大な超暴力集団は、全土を支配する中で子供たちにも暴力教育を施しており、暴力の中で生きてきた子供たちはISISが崩壊しても暴力から離れられなくなっている。

この子供たちは、早い段階から殺戮の現場で実際にテロリスト集団から殺人の方法を学んでいた。子供たちに殺人の英才教育を行っていた。(ブラックアジア:銃を持ち、生首を蹴れ。殺人の英才教育を受ける子供たち

このような「暴力に染まった者だけが生き残れる世界」をくぐり抜けた子供たちが暴力から離れられるわけがない。

暴力が蔓延した地では、暴力をまとわなければ生きていけない。だから、暴力は暴力を呼ぶ。圧倒的な暴力地帯で生き残れるのは、圧倒的な暴力を振るえる人間だけという地獄のような哲学を植え付けられたのである。

彼らは今後、必要なものや欲しいものがあれば、他から奪ってくる。ISISが休むことなく領土を拡大していたのは、焼き畑農法と同じだ。

何も生産しないから、周囲からどんどん奪っていくしか生き残れないからそうしていたのである。このような暴力の中で生きてきた子供たちが、次の暴力の時代を担う。

こうした暴力に生産性はまったくない。必要なものや欲しいものがあれば、他から奪って来るしかない。つまり、暴力集団は、生産の代わりに略奪と破壊を必要とする。
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憎悪や暴力は、行き着くところまで行く

暴力は暴力を生み出す。そして、憎悪は憎悪を生み出す。暴力からも、憎悪からも、平和は決して生まれない。したがって、いったん生み出された憎悪や暴力は行き着くところまで行くのが自然だ。

この中東アラブ圏で起きている暴力の渦は、世界中の暴力の中に飛び込んで対立をモノともしないトランプ大統領の姿勢によって、欧米諸国にも飛び火していくのは確定路線に見える。

ユーロ圏の多くは移民として多くのイスラム教徒を国内に引き入れたが、このイスラム移民と現地の白人たちの間で激しい対立が生み出されている。

すでに対立が日常茶飯事と化してニュースバリューを失った「人種対立」は、報道されていないだけで実際には深刻化していく一方だ。

EU(欧州連合)に大量の移民を迎え入れて、そのグローバル化を正当化していたのはドイツのメルケル首相だが、今やこのメルケル首相も難民を巡るドイツ国内の亀裂によって逆風にさらされており、政治的危機に陥っている。

「多文化共生」など絵空事であり、現実を知らないお花畑の空想の産物であったことが露呈している。共生はない。共生どころか、むしろ憎悪に火が付いているのだ。

この憎悪は消えるよりも拡大し、もっと膨れあがっていくと考える方が自然だ。

膨れあがった憎悪はやがて衝突するのは当然のことであり、民族憎悪は紛争や戦争を引き起こす。

このまま推移していくと、世界中に「暴力」が蔓延していくのは避けられそうにない。憎悪の空気、暴力の蔓延は、まるでウイルスのように次々とまわりに感染し、蔓延していく。

2001年から始まった「暴力」は着実に育ち、全世界に「暴力の空気」をまき散らしている。民族は民族に、国は国に対立が激化する中で、次の時代は世界中で暴力が渦巻く地獄の世界になっていく。

暴力が蔓延した地では暴力をまとわなければ生きていけない。暴力が暴力を呼ぶ時代に、あなたは何を思うだろう。(written by 鈴木傾城)

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