日本人が1年で約90万人も消え、過疎化・空き家の侵食は都心部にまで迫っている

日本人が1年間で約90万人も減った。これは尋常ではない数字だ。これについては、ほとんど誰も関心を持たないが、こうした現象はやがてさまざまなところに悪影響を及ぼしながら日本社会を衰退させていく。地方の不動産価格は軒並み下落し、空き家が増え、日本の国土は荒廃するのは避けられない。(鈴木傾城)

鈴木傾城

プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。連絡先 : bllackz@gmail.com

日本は毎年50万人が消滅していく社会

私は、日本を最終的に崩壊させるのは、中国・韓国・北朝鮮の侵略ではなく「少子高齢化」であると思っている。日本の人口減は1990年代から始まっているのだが、日本人はもっと1990年代に何が起きたのか注意を払うべきなのだ。

消費税は1989年4月1日から取り入れられたので、日本の内需を減退させる元凶となった消費税は実質的に1990年代から悪影響を及ぼし始めている。

1997年には3%だった消費税は撤廃すべきだったのに、5%に上げたことで日本の不況はますます悪化して回復できないまま今に至っている。そしてこの1990年には、もうひとつ憂慮すべき事態が始まっていた。それが少子高齢化問題だ。

国がどんどん高齢化していき、2025年9月15日の時点で、65歳以上の高齢者は3619万人となって過去最多を記録し、総人口に占める割合は29.4%となっている。人口に占める高齢者の割合は4人に1人から、いよいよ3人に1人になろうとしている。

社会が高齢化していくと、やがてその国はイノベーションを追求することもなくなって現状維持を好むようになり、世界の新しい潮流からどんどん遅れていくようになっていく。

成長産業はハイテクだとかバイオではなく、介護だとか老人ホーム経営になっていくのだ。そして、そのうちに後期高齢者が次々と死んでいくフェーズに入って、葬儀屋が成長産業になってしまうはずだ。

ちなみに、日本はすでに人口減少フェーズに入っており、総務省は2025年1月1日時点の住民基本台帳に基づく人口動態調査で「前年から日本人住民が90万8574人減少した」と述べている。

前年から90万8574人の減少というのは減少幅・率ともに過去最大で、16年連続の減少となっている。

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価値のないものに莫大な借金をしていた

日本人が毎年約90万人が消えていくというのは衝撃的な事実だ。それでいて、高齢者の数は減ることがなく、どんどん増えていく。亡くなる人が増える一方で、新たに高齢層に入る人が増えるからだ。

日本から日本人が90万人も消えていく事実にほとんど誰も関心を持たないが、こうした現象はやがてさまざまなところに悪影響を及ぼしながら日本社会を衰退させていくことになるはずだ。

何が起こるのか。地方は人口減で維持できなくなって集落が死んでいくし、インフラは維持できなくなって地域は荒廃する。

すでに、地方都市の多くは死につつあるのだが、これによって土地価格も下落し、今まで「土地は財産だ」と思って莫大なローンを組んでいた人たちは「価値のないものに莫大な借金をしていた」という現実に気づくことになる。

空き家の増加も日本を揺るがす社会問題と化す。

平成30年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は過去最高の846万戸になっている。空き家率は13.55%である。言って見れば、7軒から8軒に1軒の割合で空き家が存在するということである。

これは都会に住んでいる人たちにとってはピンと来ない問題なのだが、地方に住んでいる人たちには切実な問題のはずだ。空き家が増えればどうなるのか。どんどん、その土地は衰退していき、土地の価値は極度に下がり、ついにゼロに収斂していくことになるからだ。

少子高齢化は放置されており、国民もまったく無関心のままだ。政治家もこんな問題を取り上げても票にならないので真剣に取り組まない。私の目から見ると、日本を崩壊させるためにわざと無視しているかのように見える。

そういうことなので、日本の人口がこれから増えるということはない。空き家はどんどん日本をむしばんでいき、地域を荒廃させる要因と化す。

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大都市圏の郊外が、スカスカになっていく

これは地方だけの問題ではない。今後、いよいよ大都市圏でも高齢化と人口減と空き家問題が深刻化していく。

まずは、大都市圏の郊外がスカスカになっていく。かつての日本は地方から大都市に人口が集中する国だったので、大都市では住宅が確保できずに郊外にどんどん新しい団地が作られて、そうした場所は「ニュータウン」と呼ばれるようになった。

東京でも大阪でも、郊外にニュータウンが大量にできたのだが、今はこのニュータウンは老朽化し、魅力を失い、若者がまったく寄りつかなくなったことによって、そこに住むのは高齢者だけになっていった。

そして、その高齢者もポツリポツリと死去するようになって、誰も入らない部屋が増えるようになったりして、ますますニュータウンは荒れていくようになる。人口が減ると店も減る。人口が減るとバスなどの運行も減る。そうすると、ますます新しい人が入ってこなくなる。

「ニュータウンは、今や巨大な墓石だ」
「ニュータウンは、現代の姥捨て山だ」

そのように自虐する住民すらもいるほど、ニュータウンは過疎化した高齢者だけの地域と化してしまった。

一方で、首都圏郊外ではニュータウンとは別に富裕層が住む「高級住宅街」もいくつか点在して存在している。東京で言えば、田園調布や成城学園などはそうした大きな家がきれいに区画整理されて並ぶエリアでもある。

板橋区の猥雑なエリアに長かった私は、19歳くらいのときに何かの用事があって成城学園に訪れたことがあったのだが、そこで富裕層の巨大な邸宅が閑静な環境の中で佇んでいるのを見て、東京にこんな場所があったのかと驚いたこともあった。

こうした邸宅も、今や見捨てられている。今の富裕層は便利で高級な都心のマンションに住むのがステータスで、地方の不便でまわりに何もない高級住宅街に住むことに何の魅力も感じていない。

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少子高齢化を解決するために税金を上げる

要するに、現代社会に生きる日本人は首都圏郊外の不便な場所にまるっきり魅力なんか感じていない。だから、そこに住むのは高齢者ばかりになってしまっているということなのだ。

そのため、大都市圏であっても、郊外からどんどん空き家が増えていくようになり、その空き家が地域をみすぼらしいものにしてしまい、ますます人が寄りつかなくなっていき、過疎化することになる。

私たちはよく「東京圏」という言い方をして東京が巨大なものであると見せかけているのだが、その東京圏に含まれる埼玉や千葉や神奈川でも最近になって、いよいよ人口が減少するようになり、空き家問題が発生するようになっている。

2010年代の初頭。私は一時期、東京を離れて地方で静かに暮らすことを考えて、広島県などを候補として挙げて、自分が住みたくなる場所を探し回っていたことがあった。だが、地方の想像を絶する過疎化と高齢化の深刻さに衝撃を受けた。

地方都市は高齢者しかいない。その高齢者も次々と亡くなっているので、集落はどんどん過疎化している。まさに、限界集落と消滅集落が目の前に広がっていた。

地方都市も、県庁所在地ではないところでは空き家問題が非常に深刻で、人口が増えない限り、インフラも崩壊するとすぐに気づいた。災害が起こると復旧も遅れ、ますます打ち捨てられる現象も起こるだろう。

「日本は末端から死んでいる」「少子高齢化で国が滅ぼうとしている」と私が大きな危機感を持ったのが2010年代の初頭だったのだ。

以後も少子高齢化はまったく解決する兆しもない。政治家どもはあきれたことに「少子高齢化を解決するために税金を上げる」と言って、ますます若者を締め上げて子供を生みにくくしている無能ぶりだ。

過疎化・空き家の侵食はどんどん都心部にまで迫ってくるようになっているのが現状だ。このようなことが目の前で起きているのに、誰もが慣れてしまって、日本は地方から崩れ去っていこうとしている。

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コメント

  1. 小國 裕和 より:

    少子高齢化が亡国の引き金になる、と遥か前から明らかだったはずなのに、政治家どもの無為無策ぶりには唖然とさせられます。無能過ぎるのか、売国議員やスパイ議員どもの策略か知りませんが、最早少子高齢化は解決し得る期限をとうに過ぎ去り、私達は沈み行く日本を前に呆然と立ち尽くすしかないのでしょう。

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