「セクストーション」という言葉は最近よく耳にするようになったが、その本質は古くからある脅迫行為と変わらない。性的な写真や動画を公開すると脅して、カネを要求したり、さらなる画像を送らせたり、ときには性的な行為を強要したりする。
被害はほとんど女性だが、男性もターゲットだ。アメリカでは最近、少年が被害に遭い、脅され、その間わずか6時間だったが、命を絶つという痛ましい事件も起きていた。オーストラリアの少年も同様の被害を受けて自殺している。
スマートフォンやSNSが当たり前になった今、このような犯罪は若者を中心に広がりを見せている。
きっかけは何気ないSNSでの出会いだ。相手との会話が深まり、親密になった気になって送って裸の写真やマスターベーションの写真を送ってしまう。そこから突然、「これをネットに流すぞ」という脅しが始まる。
加害者が被害者を思いのままに操れるのは、「恥ずかしい」「知られたくない」という感情を利用しているからである。性的な内容を含む私的な情報は、誰もが公開を恐れる。その心理を巧みに突いて、加害者は被害者を追いつめていく。とくに、生きていく上での経験が少ない若い世代は、より深刻な影響を受ける。
この種の被害は相談しづらい。家族や先生に打ち明けても、「なぜそんな写真を送ったのか?」と自分が責められる。それが、被害者を孤立させていく。加害者の要求はそのあいだにもエスカレートの一途をたどる。
インターネットの特徴として、一度拡散された情報を完全に消し去ることは極めて難しい。その事実が、被害者の不安をさらに大きくする。自分の評判や信用が一瞬にして崩れ去るかもしれない。そう考えると、脅迫に抵抗することすら難しくなる。
多くの被害者が精神的に追いつめられていくのは、「いつ何が公開されるかわからない」という不安が絶えずつきまとうためだ。
じつは、このセクストーションで、強度のリスクにあるのが中東の女性たちである。中東はイスラム圏であり、社会や文化に根差した「性的なタブー」が存在する。性的な被害に遭うと、それは一族全体の名誉にもかかわる重大な問題として扱われる。場合によっては、名誉殺人で自分が殺される。
中東の女性は、被害に遭っても家族に打ち明けることもできないのだ。