日本では結婚が減っているのだが、結婚しても3組に1組が離婚するのが現実だ。この統計は、厚生労働省が公表するデータにも表れている。2023年の婚姻件数は50万件程度と過去最低水準に近く、一方で離婚件数は約18万件に達している。
離婚の背景には、多くの要因が絡んでいる。経済的な理由、価値観の不一致、夫婦間のコミュニケーション不足、不倫、さらには家庭内暴力などの深刻な問題もある。
離婚は、もはや珍しくない話である。昭和の時代では「離婚は恥」という社会的な認識が強かったが、現代では「自分の幸せを優先する」という価値観が浸透しつつある。
特に女性が経済的に自立できる環境が整いつつあるため、「我慢する結婚生活」を続ける理由が減少している。結果として、離婚は選択肢のひとつとして捉えられるようになり、以前よりも手軽にその道を選ぶ傾向が強まっている。
ただ、離婚が手軽になったから、当人に精神的ダメージを与えないのかというと、そうでもなく、離婚後も重い気持ちを引きずっている人も多い。この日、池袋で話を聞いたシングルマザーの女性もそうだった。
「結婚生活を続けるのは、自分を殺し続けることだと思った」
池袋西口からほど近いところにある喫茶店で、30代の彼女はブラックで砂糖抜きのコーヒーを飲んで静かにそう言った。「自分を殺し続ける」という箇所を、彼女は私に強調した。
いま彼女は、この池袋でデリヘル嬢をしているが、元は美容クリニックの広報担当として働いていたという。そのせいか、ファッションも化粧も自然な感じで好感が持てた。落ち着いた雰囲気と理路整然とした言葉づかいもあって、彼女が今、風俗で働いているという雰囲気はまったくなかった。
勤めているデリヘル店ではすぐにランカーに入れそうだが、必要最小限しか出勤しないのでランカーではないのだと彼女は説明した。「まだ、子供に手がかかりますし、私もまだ精神的に不安定なところもあるので」と言った。
彼女を精神的に不安定にさせたこと。そして、今も引きずっていること。それが、離婚だった。