「私、本当はこのビジネスをしたくないし、田舎に帰りたいけど、子供を育てるにはお金がいるのでやめられない」
「セックスワークは好きじゃない。でも、私は借金があるのでやめられない。やめたら死ぬしかない」
東南アジアのあちこちの歓楽街で、知り合った女性の多くがそのように言って、落ち込んだり、泣いたり、ふさぎ込んだりする姿を今でも思い出す。
そういう話を聞いたとき、私はいつも「そうだな……。子供を育てるためには彼女は逃げられないんだな」と思ったり、「借金があるのだから逃げられないんだな」と思ったりしていた。
ここ最近、何度も何度も彼女たちのことを思い出して「彼女たちは確かにそういう境遇だったけれども、本当に彼女たちはそこにいたほうが良かったのだろうか?」と考えたりしている。
なぜなら、「ここから逃げられない」と言った女性と同時に、逃げられないがゆえに心が壊れて廃人と化してしまった女性も同時に見ていたので、気丈に耐えて仕事をしている彼女たちの行く末が見えていたからでもある。
「好きな仕事じゃないけれど逃げられない」
「逃げたいけれど逃げたら生活が破綻する」
確かにそうかもしれない。彼女たちが逃げられない境遇にいるのはわかる。逃げても問題は解決しない可能性もある。「でも、本当は逃げても良かったのではないか?」と私は今までにない視点を考えるようになっている。
自分の心が壊れてしまうくらいならば……。