フィリピン編
フィリピンをさまよっていると、どんな場所に行っても、たとえ知らないスラムに紛れ込んでも、会うことになる「女性」がいる。それは、「日本語ができる女性」だ。
路地裏の、どこかの店で歩き疲れた身体を休めようと座る。そうすると、すぐに人が大勢集まって、好奇心いっぱいに声を掛けてくる。
「どこから来たの?」「何してるの?」
日本から来たと答えれば、まわり中に「日本人がふらふらやって来た」と噂が駆け巡る。すると、大勢の中からひとりかふたり、「日本語ができる」という女性が出てくるのだ。
ごく普通の主婦。孫の手を引いた老いた女性。スラムにいるのに凛とした感じの女性。日本語のできる女性の年齢は様々だ。しかし、みんな懐かしそうな顔をしてやってきて声をかけてくる。
「アラ、アナタ日本人? ココデ何シテル?」