ジョルジュ・バタイユはフランスが生んだ哲学者だが、彼はマダム・エドワルダというポルノ小説を書いて、売春女性を「神」と呼んで崇めた。
最も卑しいと言われている女性を、最も崇高な存在にして投影する。ここに価値感の逆転を見ることができる。なぜ、価値感の逆転が起きるのか。
それは、世の中の規律、権威、威厳、秩序に対して、失望があったり、絶望があったからだ。ジョルジュ・バタイユは、要するに「神」という権威に絶望を感じていたのだ。
だから、神を最大限に嘲るために、最も卑しいと言われていた売春女性を神に仕立て上げて、その神「マダム・エドワルダ」が、堕落の限りを尽くすのをポルノとして描写した。
正義が悪となる。悪が正義となる。
このような混乱した物語が世の中に受け入れられるようになったとき、その世の中は崩壊に近い。権威が揺らいでいるということだからだ。あるいは、権威はすでに失墜している。