これから外国で暮らすことを考えている人は、住む国をよくよく精査して選べ

これから外国で暮らすことを考えている人は、住む国をよくよく精査して選べ

香港に住んでいるブラックアジアの読者がいるのであれば、私は「手遅れになる前に、早く家族を連れて日本に戻れ」と言いたい。もしかしたら、何も起こらないかもしれない。しかし、中国共産党という信用できない政権に監視されながら生きるのは人間らしい生き方ではない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

人間は人種・国家・宗教などで、分離して対立する

中国の武漢で新型コロナウイルスが発生して世界中にパンデミックを引き起こし、欧米ではその責任が中国にあるとして、急激に中国に対する感情が悪化していった。

その前に中国は知的財産を侵害し、全世界にアンフェアな競争を仕掛け、一帯一路で途上国を経済植民地にし、チベット・ウイグルで人権侵害を行い、香港を侵略し、各国政府の議員を買収し、あちこちに中国人を意図的に移植させて文化侵略を行っている国である。

こうした行為のすべてに多くの国は苦々しく思っており、最初から中国人に対する感情は良くなかった。こうしたことから欧米では「アンチ中国」の感情が吹き荒れるようになっている。

ところが、問題があった。

欧米人の多くは中国人と他のアジア人の区別ができない。そのため、アジア人全体が中国に関係なく襲われるようになってしまった。韓国人・日本人のような東アジア人だけではなく、フィリピン人も、ベトナム人も、タイ人も、マレーシア人も、みんな欧米で叩きのめされている。

「黒人を差別するな」と激烈なBLM(Black Lives Matter=黒人の命「だけ」大切)を展開していた黒人もまた、アジア人を襲撃しているのだ。

多文化共生など「ただの理想論」であって、そんなものは現実の前に吹き飛んでしまうことを私たちは学習している。長い年月が経っても人間は人種・国家・宗教などで、分離して対立する。

イスラエルとパレスチナの暴力の応酬もまったく終わる気配はない。多文化共生なんかあり得ないのである。

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これからも「中国vs欧米」の対立は全方面で起こる理由とは?

多文化共生という理想主義の元で、欧米諸国はどんどん移民を入れるようになった。欧米などは積極的に移民や難民を大量に受け入れ、多文化共生を国内に定着させようとしたので、多くの首都が人種の坩堝となった。

「そうすることによって互いに理解が深まり、共存できる」と当初は言われていた。しかし現実を見ると、まったく逆の取り返しのつかない状況になった。人々は互いに対立し、激しく衝突し、暴動が次々と発生するようになっていった。相互理解も共存共栄もそこにはなかった。

人種も、宗教も、文化も、生活も、まったく異なる人間を一気に、かつ大量に流入させた結果、生まれたのは対立と憎悪だったのだ。

今後は中国と欧米の対立はますます激しくなっていくので、中国人と欧米人との軋轢はどんどん悪化していく。コロナによるパンデミックが収束したとしても、アンチ中国の感情は消えない。

なぜなら、中国共産党の体質は変わらないので、これからも「中国vs欧米」の対立は全方面で起こるからだ。

憎悪はとても強く深い感情である。だから、憎悪が湧き上がるとそれは伝染する。共鳴するにしても反発するにしろ、相手と同じ「強い感情」が当事者に発生して広がっていく。

感情は往々にして理性を超える。そのため憎悪が蔓延すると理性は働かない。個人的な憎悪もそうだし、集団的な憎悪もそうだ。それが国家的な規模の憎悪になることもある。そういった憎悪は、しばしば紛争や対立を生み出す元凶となる。

中国共産党は利己主義で傲慢だ。そのため、もはや止めることのできない憎悪の応酬を生み出すことになる。激しい憎悪を私たちはこれからも目撃する。今、起きているのはそうした現実なのである。

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「多文化共生」どころか「文明の衝突」が現実化する

中国と欧米の対立は最終的には局地戦争・代理戦争から本丸の中国本土を攻撃するような戦争に向かう可能性もある。私は欧米と中国の戦争は起こるものと考えている。

しかしながら、日本の政治家や事業家は、欧米に付くのか中国に付くのか態度をはっきりさせていない。なぜなら、彼らはどちらからも利益を引き出そうとしており、どちらか一方に荷担した姿勢を見せるのは得策ではないと思っているからだ。

中国は「人類の敵」と化してしまっているのだが、中国市場は大きいので日本の政治家や事業家は「中国とケンカしたくない」と思っている。

中国共産党がどんなにあこぎな政権で、チベット・ウイグルで人権侵害がどんなに行われていようと、彼らは金儲けの方が大切なので中国を切らない。日本は最後の最後まで優柔不断な態度で終始するだろう。

場合によっては日本の大物政治家の何人もが中国共産党に買収されて、欧米よりも中国に付く選択をすることもあり得る。そうなると、日本人もまた「中国の味方」として欧米から排斥されるようになっていくのだろう。

世界は「多文化共生でみんな仲良く」とはならない。歴史を見れば分かる通り、果てしのない憎悪が対立と衝突と戦争を生み出し、「多文化共生」どころか「文明の衝突」が現実化する。

民族が民族と対立し、国が国と対立するのだ。

すでに日本は「欧米vs中国」の前に、中国・韓国・北朝鮮から歴史プロパガンダ戦争を仕掛けられていて、「日本人だから憎悪される」という経験をすることも多くなってきていた。

日本人もまた民族対立に巻き込まれている。多文化共生など馬鹿なものを信じていると真っ先に被害に遭う。多文化共生は「ない」と思わなければならない。

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自分の住む国をよくよく精査して選んだ方がいい

日本人も必ずこうしたものに巻き込まれていくわけで、これから外国で暮らすことを考えている人は自分の住む国をよくよく精査して選んだ方がいい。

たとえば、日本人の多くは数年前まで「中国大陸は中国共産党が支配しているから何かあるかもしれないけれど、香港は大丈夫だ」とタカをくくっていた。しかし、香港の立場は一瞬にして暗転した。

香港はもう中国に飲み込まれ、民主化運動の先頭に立っていたアグネス・チョウ(周庭)も、極悪犯が収容される刑務所にぶち込まれて、今どうなっているのか誰も知らない。

香港に住んでいた日本人は、今後は中国共産党の監視下に入るわけで、もし中国と日本が敵対化したら、中国共産党の人質となる。場合によっては「日本人だから」という理由で刑務所にぶち込まれてウイグル人のような扱いを受けるかもしれない。

香港に住んでいるブラックアジアの読者がいるのであれば、私は「手遅れになる前に、早く家族を連れて日本に戻れ」と言いたい。もしかしたら、何も起こらないかもしれない。しかし、中国共産党という信用できない政権に監視されながら生きるのは人間らしい生き方ではない。

香港だけではない。今後、中国共産党が支配下に収めるかもしれないような国、あるいは中国側に付くかもしれないような国で暮らしていると、現地の日本人は日本人だというだけで巨大なリスクに直面することになる。

東南アジアを見ても、ミャンマーやカンボジアはどうなるのか分かったものではない。シンガポールに移住したがる日本人もいるが、シンガポールも華僑が支配する国なのだから、中国との関係は中立と言うわけにはいかないだろう。

家族を引き連れてシンガポールに移住したYouTuber芸人もいたが、選択が甘すぎる。リスクだと思わないだろうか?

欧米にいる日本人は、中国人排斥がアジア人排斥にまで広がっていく可能性もあるわけで、自分がアンチ中国であっても巻き込まれてしまうこともあり得る。そういう時代になっているのだ。

だから、これから外国で暮らすことを考えている人は自分の住む国をよくよく精査して選んだ方がいいと私は言っている。今後、奇跡的に世界情勢が落ち着いていけばいいのだが、いったん荒れ始めたらリスクは加速度的に増大する。

状況を甘く見てはいけない。
すでに世界は変わってしまったのだから……。

『言論の不自由: 香港、そしてグローバル民主主義にいま何が起こっているのか(ジョシュア・ウォン)』

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