サラ金でも何でも「貸してくれるなら借りる」と考える人が5.6%もいる事実

サラ金でも何でも「貸してくれるなら借りる」と考える人が5.6%もいる事実

銀行ローンや消費者金融が駅前に大きな看板を出しているというのは、すなわち借りる人がいるから成り立っているということでもある。サラ金でも何でも貸してくれるなら借りるという「5.6%の人」は、自分がどれだけの金利を課せられるのかを考えもせずに、15%の金利だろうが18%の金利だろうが平気で金を借りて回る。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

サラ金でも何でも貸してくれるなら借りるという5.6%の人

手元に金がない時、現代の日本人はまず最初に銀行のカードローンを最初に使う。大手の銀行のキャッシュカードは反対側に入れるとカードローンになるので、まるで自分の金を引き下ろすような感覚で金を借りることができるからだ。

銀行のキャッシュカードを持っていない日本人は珍しいと思うので、キャッシュカード一体型のカードローンは誰もが気軽に使える最初の借金の入口であるとも言える。ところで、このカードローンについて一般の人たちはどのような感覚を持っているのだろうか。

2020年3月31日に発表された全国銀行協会の「銀行カードローンに関する消費者意識調査」によると、銀行のカードローンについては「必要があっても絶対に利用しない」と考えている人が53.2%であったと報告している。

世の中の半分の人は「いつでも借金することができるかもしれないが、借金はしたくない」と考えていることが分かる。しかし、「借りたくはないが、借入先が他になければ利用する可能性がある」と考えている人もいる。26.0%がそうした人だ。

逆に、「借りたくはないが」とはまったく思わず、「必要になった場合は、借入先のひとつとして考える」「必要があれば、積極的に利用したい」と考えている人たちもいる。この2つは別にカードローンで金を借りることについては、やましい気持ちは何もない。「貸してくれるなら借りる」のだ。この人たちは20.9%の割合でいる。

消費者金融(サラ金)については敷居が上がる。「必要があっても絶対に利用しない」が83.9%となる。しかし、「必要だったら考える」「積極的に利用する」という人たちも、合わせると5.6%いる。

金がなくなったら、サラ金でも何でも貸してくれるなら借りるという「5.6%の人」は、一般の人から見るとなかなか思い切った金銭感覚を持っていると普通の人なら考えるに違いない。

ところで、ヤミ金はどうか。さすがに「ヤミ金から金を借りるのはどうかしている」と普通の人は思うが、それでも「必要だったら考える」「積極的に利用する」という人がいるのである。合わせると1.6%がそうした人たちだ。

こういう人たちは、もはや経済観念は完全に欠落していると言ってもいい。

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世の中には、最初から金銭観念がない人間もいる

世の中には、最初から金銭観念がない人間もいる。たとえば、石川啄木などはそうだった。この作家には経済観念など最初からなかった。(ブラックアジア:石川啄木。娼婦の身体に溺れ、借金まみれになって死んでいった詩人

これだけ高度情報化の時代になり、高等教育も進んだ社会でも、金銭感覚に乏しい人は相変わらず存在している。銀行ローンや消費者金融が駅前に大きな看板を出しているというのは、すなわち借りる人がいるから成り立っているということでもある。

サラ金でも何でも貸してくれるなら借りるという5.6%の人は、自分がどれだけの金利を課せられるのかを考えもせずに、15%の金利だろうが18%の金利だろうが平気で金を借りて回る。

この傾向は真夜中に生きる人たちに顕著である。働いて手に入った金を右から左へと贅沢品や享楽や豪遊で使い、足りなくなったらキャッシングしたり消費者金融で借りたりして資金繰りする人も多い。

彼らの人生の浮き沈みは凄まじい。金がある時とない時の差は、山から谷まで急斜面を一瞬で転がり落ちるような、そんな変動を見せる。

借金をすると自分のペースで生きることができない。なぜ悠然と構えることができないのかというと、借金には金利があって期限もあるからである。

期日が決められていることで毎月のように、場合によっては毎週のように金策に追われる。そしてトータルで見ると借りた金以上に返さなければならない。そのため、いったんキャッシングで自転車操業に入ってしまうと、最初の返済に失敗した時点で転落は決定的になる。月が変わるごとに谷の深さは底なしになる。

風俗に転がり落ちた女たちの少なからずが、借金に追われて修羅場の中で生きているのは私も確認している。稼いでいるのに金がない。ホストやショッピングに金を使って残らない。そして、精神的に今にも壊れる寸前の中で働いている。

彼らは深みに堕ちたら這い上がれない「仕組み」にとらわれていく。底に堕ちたら、そこでは堕ちた者をより深みに突き落とす人間たちがいるからだ。

1999年のカンボジアの売春地帯では何があったのか。実話を元に組み立てた小説、電子書籍『スワイパー1999』はこちらから

深みに堕ちたら這い上がれない「仕組み」とは

私は一時期、シンガポールの売春地帯であるゲイランに好んで泊まっていた時期があったのだが、ここでは24時間ずっと女たちがストリート売春をしていた。

女たちの国籍はまちまちだった。インドネシア女性もいれば、タイ女性もいれば、スリランカ女性もいれば、中国大陸の女たちもいた。中にはラオスから来たという女もいた。

彼女たちに話を聞くと、ほとんどは貧困から出稼ぎ売春を選び、手配師に飛行機代や諸経費を前借りしているので、最初の数ヶ月は売春しても金が入らない状況に置かれていた。

体調が悪くても、精神を病んでも、借金を返し終わるまで逃げられないのである。この修羅場に、女たちはこぞってアルコールやドラッグに手を出して憂さ晴らしをする。

私の知っている女たちは、アルコールやドラッグが好きな女たちが多かった。なぜ、彼女たちがそうなるのかというと、売人たちがうようよしていて親切に声をかけてくるからである。

「つらいのかい。じゃ、これで忘れたら?」とドラッグを手渡しする。

カンボジアの売春地帯でも似たようなものだった。売春宿に女たちは手配師(人身売買業者とも言う)に金を建て替えてもらって連れて行ってもらっているので、彼女たちも最初の数カ月は無給で働くことになる。

売春宿には「ママサン」と呼ばれるオーナーがいるのだが、このママサンが曲者(くせもの)だった。

新米の女が来たら積極的に女たちを酒やタバコやドラッグやギャンブルをけしかけて依存症にさせたり、華美な服を次から次へを買わせて金を散財させる。

なぜそんなことをするのか。金を稼ぐどころか使わせることによって女たちが永遠に売春地帯から抜け出せないようにするためだ。

転落したら、転落した世界でそこから這い上がれないようにより深い地獄に突き落とす。若い女たちは、自分が「より地獄に突き落とされる仕組み」の犠牲になっているということに気づかないまま、より深みにはまっていく。

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それは、地獄に続く落とし穴にも続いている

事業家は経営がうまくいかなくなって借金まみれになり、やがて自転車操業に追い込まれるようになると、まるで降って湧いたように救世主のような人間が姿を現す経験をする。

その見知らぬ人間は、丁寧で紳士的で優しい口調で「儲かるビジネスがあるのですが、一緒にやりませんか。出資してくれれば大儲けですよ」とささやく。あるいは、「儲かる新規公開株」「儲かる不動産経営」のような話をしてくる人もいる。

「別に無理にとは言いませんよ。他にもこの話に乗りたいという人はたくさんいますから」と言って、出資を無理に誘わないのだが心理的な揺さぶりで出資を促す。

普段なら「胡散臭い」と思っていても、本業が火の車のときはワラをもつかむような気持ちでいるので、深く考えることもなく金を出して赤子の手をひねるように金を持っていかれる。

あるいは、あっちこっちから金を借りて、それでも金が足りない事業家の携帯電話に突如として知らない人間から電話がかかってくる。それに出ると、温厚で明るい声の男が「融資をお考えではないですか?」と言ってくる。

実は消費者金融の社員などが、ブラックリストに載ってどこからも金を借りられない人の名簿をヤミ金に売っていて、ヤミ金はそれを見て端した金を貸して、その人が持っている最後の信用を金に変えようと近づいてくるのだ。

金で転落した人間の前には、それが必ずこのような地獄からの使者が現れて、堕ちた人間をより深みに突き落とす世界がある。

上流階級の人間は親の資産と財産を継承させる「仕組み」が機能しているのはよく知られているのだが、社会の底辺では失った人間からさらに奪う「仕組み」が機能していることはあまり知られていない。

それは誰かが意図的に作り上げたものではなく、自然発生的にできた世界で、日本だろうが欧米だろうが東南アジアだろうが、すべての国で同じ仕組みが機能している。

底に堕ちたら這い上がれないのは、堕ちた人間をさらに堕とすという「仕組み」に気づかないまま、ずるずると泥沼にはまっていくからである。アンダーグラウンドの恐ろしさを知らなければ、どこまでも闇に引きずり込まれていく。

地獄の深さは私たちが想像している以上に深い。資本主義の社会においては、金銭感覚の欠如が地獄の入口となる。

ボトム・オブ・ジャパン
『ボトム・オブ・ジャパン 日本のどん底(鈴木 傾城)』

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