2020年のコロナ禍で、タイの歓楽街パタヤは壊滅的ダメージを受けているのだが、私たちのようなストレート(異性愛者)には気が付かないところで、パタヤの持つ「もうひとつの裏の顔」もまた崩壊寸前のダメージを受けていた。
パタヤは世界で名だたる売春地帯なのだが、ストレート(異性愛者)の人間の売春地帯であると同時に、恐らく世界でも有数の「ゲイの売春地帯」でもある。
たとえば、「ボーイズタウン(Boyztown)」はゲイにとって外せない場所なのだが、このボーイズタウンは閑古鳥が鳴いて主要な店がことごとく営業停止になっていると報告されている。
有名店『トイボーイズ』は、恐らく破綻。『カストロ』と『ボーイズ・ボーイズ・ボーイズ』は週末になって思い出したように営業するのみで、平日はほぼすべて休業状態にある。
大手がこのような状態であり、資金力のない小さなバーは閉鎖したところもあれば、今年持たないのではないかと思われる店も散見されている。
パタヤのもう一つの「ゲイの聖地」と呼ばれていたスンニープラザもかなりのバーが閉鎖してしまっており、ゲイバー数軒がかろうじて開いているような、そんな状況だ。ゲイが来ない以上、全店閉鎖は時間の問題かもしれない。
かろうじて何とかなっているのは、欧米のリタイア組が集まっているジョムティエン・コンプレックスだが、客は激減している中で体力勝負の営業が続いている。
タイは非常事態宣言をずっと延長しており、11月中もずっと緊急事態宣言が継続したままだ。欧米は壊滅的なまでにコロナ感染が広がっていて観光客は来月どころか今年いっぱい、場合によっては来年の春頃になっても来ないかもしれない。
欧米のゲイたちは、もうパタヤに「来られない」のだから、もはやパタヤのゲイにとっては息の根を止められたも等しい状況になっている。
「ゲイ・バーも通常の売春地帯と一緒に壊滅か……」
そう思いながら、私はかつてゲイ・バーに「一度だけ」入った時のことを思い出す。そして、売春地帯とゲイたちのことを思う。私がフラフラと歩いていた「ボーイズタウン」は、次に私がパタヤに行く頃は、もう消滅している可能性もある。