今年の冬、シュマグ(アフガンストール)を「ゲリラ巻き」する人が出現するか?

今年の冬、シュマグ(アフガンストール)を「ゲリラ巻き」する人が出現するか?

アフガニスタン人みたいな格好が好きだとか、着てみたいとか、魅力を感じるとか、そんな風に公言したことは一度もないし、これからも他の人にそれを言うことは決してないだろう。あの格好は、タリバンやアルカイダやビンラディンのせいで、「テロリストの服装」というイメージしかないし、タリバンが今もあの格好でアフガニスタンで武力闘争をしている限り、そのイメージは覆ることはないはずだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

アルマーニよりも、シュマグ

私はもともとファッションにはまったく関心がない。自分が普通に見える普通の服があればそれでいいと思っている。

ブランドにも関心がない。あまり凝った服装をすることができないので、普段着も背広もシンプル一辺倒だ。他人を見て「あんなファッションがしたい」「こんなファッションがしたい」というのはない。

しかし、唯一「これは着てみたい」と思うものがある。アフガニスタンの男たちがやっている、あの格好だ。

アラビア半島の男たち、特にサウジアラビアの男たちは真っ赤な布に黒い輪を付けて歩いている。他にも、故アラファト議長がいつも頭にかぶっていたパレスチナ人特有の布もよく知られている。

調べて見ると、この頭に巻く布のことを「クーフィーヤ」と呼び、輪っかの方は「ガカール」と呼ぶらしい。私はこちらには特に関心がない。

アフガニスタンの男たちがかぶっているのは、そういう華美なものではなく、何となく無骨で、荒削りで、色がくすんでいて、どこかほつれていて、しかし実用的な感じがする布だ。

あの布のことを、「シュマグ」もしくは「アフガンストール」と呼ぶようだ。このシュマグをつけたアフガン人の格好がやたらと印象に残って、「あの格好をしてみたい」とは、ふと思う。

アルマーニだとか、ブリオーニだとか、トムフォードとか、そういうのはどうでもいいし、別に着たいとも何とも思わない。憧れもないし、関心もない。死ぬまでに一度は着たいとか、そんな願望もない。

アルマーニよりも、シュマグ(アフガンストール)をつけた民族衣装の方が私には魅力的に映る。

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シュマグ(アフガンストール)

「テロリストの服装」というイメージ

ただ、アフガニスタン人みたいな格好が好きだとか、着てみたいとか、魅力を感じるとか、そんな風に公言したことは一度もないし、これからも他の人にそれを言うことは決してない。

通常、あの格好はタリバンやアルカイダやビンラディンのせいで、「テロリストの服装」というイメージしかない。タリバンが今もあの格好でアフガニスタンで武力闘争をしている限り、そのイメージは覆ることはないはずだ。

つまり、あの格好をしたいと言ったら「テロリストになりたいのか?」「テロリストを賛美しているのか?」「イスラム過激派なのか?」と、普通の感覚を持った人に思われる。

純粋に民族衣装として格好が良いと思うと言っても、あまり理解されることはないだろう。

さらに、アフガニスタンでは女性に対する扱いが想像以上にひどい。あの格好を好きだと言ったら、人によっては女性蔑視の男のようなイメージすらも抱くかもしれない。

そう言えば日本のカルト教団だったオウム真理教の信者たちが、着ていた服装は「クルタ」と呼ばれるもので、これはインドの民族衣装である。インドでは今でもこの「クルタ」を着ている男性を見かける。

このクルタもオウム真理教のせいで非常に印象が悪くなって、これを着て日本の街を歩いていたら「カルト教団の信者なのか」と思われて、あからさまに避けられるか、睨まれるか、嫌われるだろう。

服装自体には罪はないのだが、あまりにもイメージが悪くなって冗談でも着ることができなくなってしまった。

そう言えば、ドイツのナチス親衛隊の制服も非常にスタイリッシュなのだが、やはり「あの制服が好きだ」「あの制服が格好良い」と言うことは社会的に許されていない。コスプレすらも糾弾される。そういう歴史を負ってしまった。

ドイツのナチス親衛隊の制服も非常にスタイリッシュなのだが、やはり「あの制服が好きだ」「あの制服が格好良い」と言うことは社会的に許されていない。コスプレすらも糾弾される。そういう歴史を負ってしまった。

コロナを避ける新常態ファッション

そんなわけで、私は個人的にはアフガニスタン人のあの格好がなかなか好みで、あの格好で過ごしてみたいという気持ちはあるのだが、なかなかそういうのは人に言えるものではないし、言うべきでもないと思っていた。

シュマグ(アフガンストール)も、アルカイダやタリバンと激しい闘争を繰り返していた欧米の人間たちには忌避すべきアイテムなのだろうと漠然と思っていた。

ところが、である。

ファッション業界はとっくの昔からシュマグをファッションアイテムとして取り入れていて、ELLEもシュマグを何の加工もせずにそのままファッションショーで使っているという。

さらに、欧米の女性はクーフィーヤもシュマグも、何のためらいもなく「おしゃれなストール」としてファッションのひとつにしているというのだ。

これは最近の話ではない。10年も前からの話だ。((princessefoulard:Keffieh c’est quoi ? signification des couleurs))

さらに、アフガン戦争からすでに19年近くなるのだがアメリカ軍は今もアフガンに駐留しており、現地との関わりが長くなったアメリカ軍もまたシュマグ(アフガンストール)を現地で普通に使うようになっていた。

そこから、サバイバルゲームでもシュマグ(アフガンストール)を「ゲリラ巻き=タリバン風」にして使っており、ポピュラーになっているというのを知った。

ストールに関しては日本では冬に使うものだが、もしかしてシュマグ(アフガンストール)をアマゾンで買って今度の冬に「ゲリラ巻き」にして歩いても問題ないのだろうか……。

さすがに「ゲリラ巻き」はぎょっとされるかもしれないが、今年はコロナのこともあるので「コロナを避ける新常態ファッション」として受け入れられるのかもしれない。

ブラックアジアにファッションメーカーがいたら、ぜひ流行らせて欲しい。今年の冬、シュマグを「ゲリラ巻き」をしている人が出現したら面白いと思う。もしかしたら、私が顰蹙を買いながらも勝手にやっているかもしれないが……。

ブラックアジアにファッションメーカーがいたら、ぜひ流行らせて欲しい。今年の冬、シュマグを「ゲリラ巻き」をしている人が出現したら面白いと思う。警察に任意同行を求められるかもしれないが……。

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