風俗の性サービスには恋愛感情などない。女性はカネのためにそれをやっており、男はそれを分かった上で女性と接している。快楽をカネと交換する。それはあくまでもビジネスである。
ただ、男と女が密室で濃密な接触をするので、時には互いに意気投合して相手に恋愛感情を持つこともあるかもしれない。しかし、それはあくまでも「例外的」な出来事であり、極めて稀なことでもある。
風俗嬢はそこで恋愛の相手を求めているわけではない。女性には女性の生活があり、プライベートがある。男は快楽を得る以上のものを求めてはいけないのである。売春や風俗で許されるのは「疑似恋愛」だけなのだ。
それは暗黙の了解であるはずだ。
ただ、男の中には風俗で女性に優しくされたら、なぜか「自分には魅力があるのだ」「付き合ってくれるはずだ」「愛人になってくれるはずだ」と一方的に思い込む男もいる。
2019年10月。68歳になる九州工業大学の特任教授である金田寛(かねだ・ひろし)という男が逮捕されている。
この男は20代のデリヘル嬢に「愛人になってくれ」と迫るようになって店に出入りを禁止され、以後も「会いたい」と何十通ものメールを送り、さらには探偵を雇って彼女の住所を調べ、付きまとっていたのだった。
この男のやったことは問題行動のオンパレードだ。世間は彼を「情けない」「68歳で何をやっているのか」と責めているのだが、責められても仕方がないことを次々としている。この教授のやっていることは決して擁護できるものではない。ただ、私は世間とはやや違った印象をこの男に持っている。
どういうことか。