覚醒剤は言うまでもなくアップ系(興奮系)のものだから、依存症になると、極端な興奮や錯乱を引き起こして「理解不能」な事件を起こす。
たとえば、バスにガソリンを撒いて火を付けたり、自分の妻の首にナイフを突き立てて数時間も籠城したり、通り魔事件を起こしたりする。
「ドラッグは恐ろしい」というのは、大抵はこのアップ系の人たちの錯乱を見せられて人々が持つ感想である。
普通の人は「錯乱してバスを放火する」と聞いても、そこまで至る心理状態はよく分からない。なぜ錯乱したら、バスを放火しなければならないのか、普通では理解しがたい。
理解不能だからこそ、こうした錯乱した人たちの起こす行動を見ると「錯乱している」と捉えるのだが、実は錯乱している本人は自分が錯乱しているとは思っていない。
それどころか、自分のやっていることは「意味がある」と思ってやっている。
覚醒剤で心理状態が異様になっている人たちには、実は妄想ながら、それなりにバスを放火しなければならない理由があるのである。「見張られている」という極度の不安感がキーワードである。