タイにはMP(マッサージ・パーラー)と呼ばれる性的施設がある。これは欧米では「ソープ・マッサージ」とも呼ばれることもあるが、要するに日本の「ソープランド」とほぼ同じジャンルである。
このMPはタイでは1980年代にはすでにバンコクに定着しており、欧米人がゴーゴーバーにたむろするのと同様に、日本人や華僑(中国系タイ人)の金持ちはMPにたむろしてバンコクの夜を過ごしていた。
タイでこのような売春施設が放置されているのは、言うまでもなく警察が黙認しているからである。汚職警官は売春ビジネスを見逃すかわりに、こうした施設から賄賂をもらったり、女を抱かせてもらっていた。
タイの歓楽街は、警察と売春業者の絶妙な距離感で成り立っていたのである。しかし、こうした距離感が突如として音を立てて崩れ去り、どこかの店が摘発されるようなことも起きる。
NGO団体が騒いだとか、人身売買の告発が為されたとか、欧米の政府がうるさく人身売買の議題を持ち出すようになったとか、欧米のマスコミが「売春ビジネスが野放しだ」と報道するようになったとか理由は様々だが、外部からの圧力に耐えられなくなると、警察は売春施設の摘発を行う。
2016年6月7日、バンコクのMP「ナタリー」で起きたのは、まさにそんな出来事だった。この日、ナタリーは一斉摘発を受けて午後5時過ぎに閉店した。