今の新宿歌舞伎町はもう昔とはまったく違い、どこか毒が抜けたような観光地になってしまったように見える。
しかし、それでもヤクザの事務所は無数に点在しているし、風俗店も水商売もぼったくり店も雑居ビルの中にひしめいているし、ラブホテル街でもしばしば事件が起きる。
歌舞伎町は日本で最も防犯カメラが多い地区として知られている。それだけでなく、昼間はひっきりなしにパトカーが巡回して胡散臭い男や女を片っ端から職務質問している。
パトカーの中には3人の警察官が乗っていることが多い。
運転席と助手席には歌舞伎町の事情に熟知した警察官が乗って、後部座席には若手の警察官が緊張した面持ちで「不審者」を観察している。
彼らは歌舞伎町をパトカーで音もなく静かに流しているか、もしくは道端に寄せてじっと待機している。
そして、車の中から歩くチンピラ風情の格好の男や怪しい女に目を光らせて、警察官としての何らかの勘が働くと、パトカーで静かに後ろから忍び寄って声をかける。
ここで「不審者」が逃げようとしたり、おかしな挙動をしたら、助手席の警察官と後部座席の若手がすぐに車を降りて不審者が逃げないように両脇を固める。場合によっては腕や肩に手をかけることもある。