海外で困窮する日本人はアジア地域で全体の約70%を占める

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2017年12月11日、外務省は海外邦人援護統計を公表しているのだが、これによると2016年1月1日から12月31日までの間で起きた邦人援護は、過去10年において最も多かった。その数は2万0437人だった。

邦人援護に関しては、国情悪化・テロ・災害、重大事故から、強盗・窃盗・詐欺などで援護の細目は多岐に渡っている。その中で最近になって目立つのは「所在調査」であると外務省は報告している。

所在調査とは、家族や会社や裁判所・弁護士会の依頼によって、海外で行方がつかめない人を在外公館が保有する資料を基に調べる制度を指している。そんな人が増えているのだ。

では、邦人援護件数・人数で最も多かったのはどこか。それはアジア地域である。アジアと言っても広い。具体的にどこなのか。

在外公館別で見ると、援護件数が最も多いのは「在タイ日本国大使館」である。そして、その次に「在フィリピン日本国大使館」が続いている。

タイとフィリピンに行く日本人は多いので、必然的に彼らが現地で消息不明になったり、様々なトラブルや問題を起こしているということになる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

海外で貧困化して進退窮まった日本人の存在

「主な犯罪加害及びその他の事例の特徴」という項目を見ると、日本人の犯罪で最も多いのが「不法滞在」だった。

そして、「その他の事例の特徴」で、わざわざ「困窮」という項目が挙げられているのだが、この「困窮」はアジア地域で全体の約70%を占めると記されている。

数年前、「困窮」する邦人の存在がクローズアップされたことがあったが、海外で貧困化して進退窮まった日本人の存在は相変わらず消えていないのである。

困窮とは文字通り、国外に出て経済的に貧してしまう状態だ。日本を脱出したのはいいが、金がなくなっても日本に戻らず、一歩間違えればホームレスかその寸前にまで陥る。

1980年代から1990年代のバンコク・ヤワラー地区のジュライ・ホテルや台北大旅社にはそういった「沈没」した日本人がたむろしていて同じ日本人から金をせびって生きていた。今思えば、この男たちはまさに「困窮邦人」だった。

バンコク・ヤワラー地区の貧乏旅行者はすでに姿を消して、最近はタイのチェンマイやフィリピンの田舎で高齢化して困窮する日本人が増えている。

「困窮邦人」という言葉はフィリピンの日本人社会では当たり前に使われている。

典型的なパターンとしては、「フィリピンパブにハマったが、女性がフィリピンに帰った。そこで一大決心してフィリピンに渡ったが、金がなくなったら捨てられた」というものだ。

他にも「生活費が安いタイやフィリピンに行けば何とかなる」とアーリーリタイアして破綻していく人たちもいる。

アーリーリタイアは、そんなに甘い話ではない。(マネーボイス:身ぐるみ剥がれた日本人は「海外リタイア生活」の最期に何を見たのか?=鈴木傾城

日本で生活する以上の自制心と適応能力と判断能力を身につけていないと、いつでも落とし穴に落ちていく。

1980年代から1990年代のバンコク・ヤワラー地区のジュライ・ホテルや台北大旅社にはそういった「沈没」した日本人がたむろしていて同じ日本人から金をせびって生きていた。今思えば、この男たちはまさに「困窮邦人」だった。

「こういった人たちをどうすればいいのか」が問題

切実な「困窮邦人」の事例が新聞沙汰になった例も多い。たとえばこのようなものだ。

「フィリピンパブのフィリピン女性と結婚してフィリピンに居を移した途端に女性に裏切られて全財産を失った49歳の男」

「勤務先が倒産し、家賃を滞納したあげくフィリピン女性の妻にも逃げられ、その夜に自殺した男」

「2000円だけ持ってフィリピンに来たが、何ともならずにそのまま困窮邦人に一直線という男」

「金がなくなったので、女性の家にも居たたまれなくなって野宿していたところを保護された男」

困窮邦人の問題は、「こういった人たちをどうすればいいのか?」ということでもある。大使館は理由がどうであれ、助ける努力はしなければならないかもしれないが、一般の人たちは彼らをどう考えるべきなのだろうか。

「自業自得だから放っておけ」がいいのか、「同じ日本人だから助けてあげよう」がいいのか。こればかりはケース・バイ・ケースというしかない。

困窮邦人の問題は、「困窮した理由」が実はもっとも重要なポイントになる。

たとえば、「外国で起こした事業が傾き、必死で立て直そうとしたが結果的に失敗した」「予期せぬ事故や病気で治療費がかさんだ」というケースはあるはずだ。

誠実な日本人が誠実な理由で困窮するようになり、困り果てて日本人会や大使館に相談する。それは助けるべき価値のある困窮邦人だ。

では、「フィリピンで、夜の女性にのめり込んで生活破綻」して困窮したとか、「2000円でなんとかなるだろうと思ってフィリピンに来たが何ともならなかった」「豪遊していたら金がなくなった」という困窮邦人はどうだろう。

これは、どうも自業自得タイプで助けにくい。助けるどころか「こんな人間に税金を使って欲しくない。身勝手な奴は放っておけ」と思われても不思議でも何でもない。

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誰も助けてくれないのだという意識を持つべきだ

普通の日本人なら、誰でも誰かに迷惑をかけたいとは思っていない。

しかし、事件に巻き込まれたり、病気に襲われたりすると、入念に準備していた人であっても、一気に深刻な事態に陥る可能性は誰でもゼロではない。

あるいは、現地のインフレ化と日本の社会保障費の削減と円安の進行で当初の予定よりも大幅なダウングレードを迫られてしまうことも充分にあり得る。

事件・事故・災害・病気・詐欺・インフレ・円安は、自分で避けようと思って避けられるものではないのだ。

だから、国外にいる人は自分が困窮邦人にならないと考えるのは危険だ。ひとつでも何かの目論見が外れると経済的に苦しい状況になっても仕方がない。

しかし、充分な金もないまま日本を出て海外で困窮したり、現地の女性に騙されて困窮したりする「自業自得タイプ」が目立つようになって、それが困窮邦人の典型のように捉えられるようになりつつある。

そうすると、最悪の場合は「海外で困窮した人間は助ける必要はない」と考えるのが日本人の総意になっていくはずだ。少なくとも、今の日本で醸し出されている空気は、そういったものだ。

結局、長く海外にいるのであれば、誰も助けてくれないのだという意識を持ち、流されずに正しい経済観念を持ち、自分の身は最後の最後まで自分で守るしかないということになる。

「海外で困窮する日本人はアジア地域で全体の約70%を占める」という現実と、そのアジアとはタイとフィリピンを指しているという現実がある。

そうであれば、これらの地区を主戦場とする人は特に、最初から「誰も助けてくれない」という現状認識を持ち、トラブルを想定して生き残るしかない。(ダークネス:臆病さは弱みのように語られるが実は大きな利点である理由

無鉄砲で根拠のない自信を持って「自分の身には何も起こらない」と考えるのは現実的ではない。(written by 鈴木傾城)

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「海外で困窮する日本人はアジア地域で全体の約70%を占める」という現実と、そのアジアとはタイとフィリピンを指しているという現実がある。

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