
人々は「使う金は収入より少なくすると生き残れる」というのは知っている。本当は誰もがそれを知っている。だが、人々が気づいていないこともある。それは資本主義社会はそれを守らせないために、ありとあらゆる手法で私たちに過剰にカネを使わせるように仕掛けてきていることだ。(鈴木傾城)

プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。経済分野を取りあげたブログ「フルインベスト」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。連絡先 : bllackz@gmail.com
金利18%で金を貸すというビジネス
日本のどこの都市のどこの駅で降りても、繁華街を見渡すと気づくことがたくさんある。街のあちこちに巨大看板があって、それが消費者金融の宣伝であることだ。アコム、アイフル、プロミス、レイク……。
それぞれの企業が、即日融資だとか、1か月利息ゼロだとか、借り換えローンだとか、女性にも優しいとか、さまざまな売り文句を書き連ねて大量宣伝している。消費者金融の巨大看板が街を埋め尽くしていることに違和感を感じる日本人は、もういないのかもしれない。
こうした消費者金融は、電車の中でも大量に広告を出している。中吊り広告にも、ドアの上にも、窓にも、つり革にも、ありとあらゆるところに「カネを貸す」という広告で埋め尽くされている。
テレビでも消費者金融の広告は追いかけてくるし、インターネットの広告にも消費者金融の広告が目につく。
金利18%で金を貸すというビジネスの宣伝が日本を埋め尽くしているというのは、あまりにも異様な光景であるとは思うのだが、日本で暮らしているとそれが日常になってまったく無感覚になってしまうのかもしれない。
異常も慣れれば日常になるという好例が消費者金融の広告であるとも言える。
それにしても、消費者金融がこれほどの大量宣伝ができるというのは、何を意味しているのか。
広告もタダではない。街の巨大看板も電車のそれぞれの広告も莫大な金額がかかっている。ここが消費者金融の広告で埋め尽くされているということは、消費者金融はそれぞれ莫大な広告費をそこに支払っているということに他ならない。
そして、消費者金融がそれを支払えるというのは、それだけカネを借りている人が莫大に存在するということでもある。どれくらいの人数がいるのか。
日本信用情報機構(JICC)などの統計では、貸金業者に登録がある借入残高を保有している個人の人数は、2023年に約1729万人(登録件数は約3004万件)となっていると報告している。
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金利を考えたことのない人が大量にいる
消費者金融は上限金利、総量規制などの規制によって、たしかに縮小傾向にある。だが、それでも十数兆円規模の貸付残高が存在するため、それは無視できないほど巨大な業種である。
成人した日本人の10人に1人は、金利18%だろうが何だろうが「とにかくカネを借りている」ということを意味する。金利が18%と言えば、約4年で自分の借金が倍になってしまうものだ。
それを覚悟で借りるというのは、それだけ金融ストレスが高い状態にある人が多いのだ。実は消費者金融にカネを借りる目的で多いのは、「生活費の補填」である。大半はカネの使い方がうまくいかず、生活が逼迫する。
最初から無計画なカネの使い方をして金欠になり、「とにかく借りられるところから借りる」「貸してくれるから借りる」「消費者金融でも貸してくれるなら借りる」という人も大勢いる。
最近では、SNSの影響で「見栄の消費」「体験消費」をするために消費者金融から借りる若者もいるのだという。さらに、「推し活」「追っかけ」で散財して消費者金融に駆け込む女性も増えている。
いずれにしてもカネを借りるとき、彼らは金利のことは何ひとつ考えていない。考えていないから、金利18%でも臆せずにカネを借りられる。
考えて見たら、日本の教育も、読み書き算盤と必要最小限の道徳などを教えても、「カネ」という生々しいものについてストレートに教えることはほとんどない。
今でも日本では「カネについて気にする人間は卑しい」という考え方をする人もいるほど、そのような話を嫌う人も多い。そのため、「カネといかに接するか」という基礎は、自分で身につけなければならない状況にある。
そうすると、ある程度「資本主義」「金融」「社会システム」について関心がある人とまるっきり関心がない人では、カネに対する接し方がかなり違ったものになってしまう。当然、金利18%の負債が自分の人生にどのような影響を及ぼすのか考えない人が出てきたとしても不思議ではない。
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何が何でも節約なんかさせない
実のところ、資本主義の世界で生きるためには「使うカネは収入より少なくする」を徹底することが基本である。この基本から外れると、いくら収入が莫大であっても遅かれ早かれ破綻に見舞われる。
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だが皮肉なことに資本主義社会では、このシンプル極まりないルール「使うカネは収入より少なくする」を守らせないような仕組みになっている。
なぜなら、資本主義社会では企業が個人に「カネを使ってもらうこと」で成り立っているので、どんどん消費してもらわないと「企業が困る」からだ。節約なんかされるよりもカネを使って欲しい。消費してくれないと儲からない。
そのため、資本主義社会では朝から晩まで大量の広告を垂れ流し、人々の購買意欲をこれでもかこれでもかと刺激し、物欲を煽り立て、買わせるのだ。
「カネがない」と言っても許さない。カネがなくても、消費させる。クレジットカードもあれば、銀行のキャッシングもあれば、消費者金融もある。それで、どんどん買わせる。絶対に、何が何でも節約なんかさせない。
それが現代の資本主義の「本性」である。学校も社会も、あえて人々に「カネの教育」をしないようにしているようにも見える。
下手にカネの教育などして、大勢が「カネといかに接するか」を学んで「節約が資本主義で生き残るもっとも有効な手段」という事実を覚えてそれを実践されたら、モノが売れなくなってしまうではないか。
すべての企業にとって金融リテラシーに長けた個人は敵なのだ。
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過剰にカネを使わせるように仕掛ける
起業家や経営者は朝から晩までカネを稼ぐことに全力を集中している。言ってみれば「カネを稼ぐこと」のために生きている。だが、普通の人々は「カネのため」に生きているわけではない。
だから、普通の人が金融の仕組みを専門家並みに知る必要はどこにもない。普通に生きている人がマネーサプライが何かを知る必要などほとんどないし、ましてやマネタリーベースとマネーサプライの違いとは何かを知る必要もない。
だが、知るべきことはある。それは資本主義で生きている以上、カネがいかに大切かを理解することだ。
「働くこと、節約すること、貯めること」がコントロールできていないと、遅かれ早かれ人生が破壊されてしまうのはたしかだ。「カネの使い方」がコントロールできていないと一瞬で破滅する。
人々は「使うカネは収入より少なくすると生き残れる」という事実を知っている。そんなことは常識だと思っている。
だが、人々が気づいていない重大なこともある。それは、資本主義社会がそれを「守らせない」ために、ありとあらゆる手法で私たちに過剰にカネを使わせるように仕掛けてきていることだ。
節約させるどころか、逆にどんどんカネを使わせようとする。
資本主義の親玉が企業なら、当然そうなる。企業は儲けるためにカネを使わせる必要があるので、私たちに節約させないように広告から営業まで含めてあらゆる手法で私たちを揺さぶっている。そしてカネを使わせる。
そういう社会であることに気づいていない人もいる。あまりにも、どっぷりと今の社会に浸って生きていると、気づくこともない。
しかしいったん気づくと、街のあちこちに巨大看板があって、それが消費者金融の宣伝であることは、資本主義社会のひとつの事実を私たちに教えてくれているのがわかるはずだ。
社会の本音は「節約しなさい」ではなく「浪費しなさい」の側にあったのだ。とにかく、どんどん買わせる。何があっても節約なんかさせない。カネがなくても使わせる。すっからかんになっても買わせる。これが、資本主義の裏の顔だった。







コメント
テレビを観ないように心がけて生活しています。だから、CMの強烈さが耐えられません。「買え買え」って言ってますよね。恐ろしいです。ネットにも沢山広告があるから、結局オンラインショッピングしてしまうんです。困ります。
自分は、ニュース以外のテレビ放送はタイパの為、ビデオで観ます。
なので、話題がコマーシャルになると困ってしまいます。
ネット広告、閲覧に邪魔なだけなんですけど、企業は効果が出ているんと思っているんですかね?
買わないと困るのは企業だけではなく、国もですね。
消費税が入ってこない。
地方消費税は、ともかくとして社会保障に使われるのは子供だけに限定してほしいと切に願います。
年金の財源にまで消費税が使われたら、枯れ木に肥料と水をやるようなものです。