日本人は先進国で生まれて「運が良かった」はずだが誰もそれを享受できない?

日本は曲がりなりにも先進国である。「まだ、個人の努力で成功をつかみ取るチャンスは残されている。努力で成功することは不可能ではない」と主張する人もいる。だがもっと時代が進めば、もう個人の努力ではどうしようもないほどの地獄になってしまう。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

日本はまだ「腐っても先進国」であるとも言える

国連加盟国は193カ国。そのうち、先進国に分類されるのは30カ国。ということは、先進国で生まれるよりも途上国で生まれる確率の方が高かった。だが、私たち日本人は「幸運」なことに先進国である日本で生まれた。

日本はすでに30年近くも実質GDP成長率の平均が1%にも満たない「成長できない国」であり、貧困層が莫大に増え続けている国である。今後も凋落はとめられず、近いうちにドイツに名目GDPも抜かれていくことになる。

しかしながら、日本はまだ「腐っても先進国」であるとも言える。先進国で生まれたからと言って絶対に恵まれた生活になるとは限らないが、途上国で生まれるよりもチャンスが多いのは事実だ。

たとえば、シリアやイラクで生きていたら大変なことになっていただろう。ソマリアやコンゴで生きていたら、地獄を這っていただろう。ウクライナで生まれていたら、戦乱に翻弄されていただろう。

あるいは、同じアジアで生まれていたとしても、日本に生まれるのと北朝鮮に生まれるのとは人生はまったく違ったものになっていたはずだ。

生まれた国、生まれた時代、生まれた場所、生まれた両親、五体満足だったかどうかによって人間の運・不運が決まる。不運であれば、その人生は自分の努力ではどうしようもないほどのハンディを負って生きることになる。

普通の生活を送るということ自体ができない国は世の中にはたくさんある。そう考えると、多くの日本人は良い国に生まれたと言うことができるかもしれない。だが、もちろん日本で生まれたからと言って、誰もが平等に良い思いをするわけではない。

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日本女性が貧困から風俗の世界に入る姿を見聞きするうちに、彼女たちは実際にはどんな女性たちなのだろうかと興味を持つようになっていた。

「最良だった時代」はとっくに過ぎ去った

1930年に若者だった日本人と、1960年に若者だった日本人と、1990年に若者だった日本人は、みんなそれぞれ運命が違っていた。ほんのわずかな差で「良い時代」と「悪い時代」は入れ替わるのだ。どちらになるのかは、「運」でしかない。

戦後の成長期からバブル崩壊までの時期、いわゆる「右肩上がりの時代」とはまったく違う異質な時代がすでに1990年代から到来している。それは、2000年代に入ってから急激に加速していったものだ。

右肩上がりの時代では、人々はそれほど深く考えなくても、みんな自然に豊かになれた。滞りなくどこかの会社に勤めていれば、自然に給料は上がっていった。そして、買った不動産も株式も放っておけばどんどん価格が上がっていった。

この時代に若者だった人たちは「良い国」の「良い時代」に生まれたのかもしれない。戦後日本の絶頂期がそこにあった。

だが、それは1989年12月で終わり、1990年から巨大なバブル崩壊で日本経済は撃沈した。それ以降は経済が縮小していく中で、すべての日本人が経済衰退の中で生きなければならなくなった。

たしかに日本は先進国であり、かろうじて「良い国」ではある。しかしながら「最良だった時代」は過ぎ去ってしまったのだ。視界が突如として不明瞭になり、生活は誰もが「守り」に入り、漠とした不安が世の中を包むようになった。

たとえば、今の日本では「良い大学に行って、良い会社に入って、定年まで勤めて、あとは年金で悠々と生活」が消えた。

良い会社に入っても雇用形態は昭和の時代の「終身雇用」は成り立たず、年功序列も消え、正社員を増やすこともなくなった。就職は将来を約束するものではなくなり、今をしのぐだけの役割しかなくなった。

今はAI(人工知能)がパラダイムシフトを起こしている最中だが、そのうちに効率化が進むとホワイトカラーの仕事から消えていくはずだ。では底辺の仕事は、というと「多文化共生」とかで入ってきた外国人が担うので、高い賃金が欲しい日本人は最初から弾かれる。

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アンダーグラウンドで働く多くのデリヘル嬢と会い続けて見えてくるのはそのめくるめく多彩性だった。

先進国で生まれて「運が良かった」はずなのに

ホワイトカラーの仕事はAIが担う。底辺の仕事は外国人が担う。日本人の若者はというと、どちらにも就けず、さまようようになる。彼らのうちの少なからずは奨学金という名の「学生ローン」を背負っているので地獄だ。

職歴も経験も積めぬまま、履歴書には空白だけが広がり、面接に行っても「即戦力ではない」と門前払いされる。アルバイトすら奪い合い、時給は下がり続け、生活費を切りつめても未来は見えない。

SNSを開けば成功者の煌びやかな日常が流れ込み、比べるほどに自分の無力さを突きつけられる。心を病み、夢も希望も奪われた若者たちは、やがて自室に引きこもる。

ニートと呼ばれる「若年無業者」は約63万人もいる。その予備軍も入れれば約200万人が、ごく普通に仕事をするということすらもできていない。仕事をしなければ、自立することもままならない。

自立できなければ、自分の人生を築くことができず、結婚も夢のまた夢になる。少子化はもう数十年も解決されないまま放置され、これに高齢化が重なって日本は「超」がつくほど少子高齢化の国となった。

少子高齢化が加速し続けると、国としてのバイタリティが消える。消費も消え、内需が細り、企業も売上を落とし、全体が衰退していく。そんな社会の中では、勉強しても、大学を出ても、それで成功できるほど楽な時代ではなくなった。

これに乗れば安泰だという「レールに敷かれた人生」が昭和で終わってしまったのだ。そして、政治家は日本の現状を変えることができず、やることと言えば増税だけとなっている。

政治家は官僚の言いなりで、有権者は現状維持だけで「知っている人」に入れ、日本人はもう自国をふたたび強く活気のあふれる国に作り変えようとするのをあきらめてしまったように見える。

日本人は先進国で生まれて「運が良かった」はずなのに、その運の良さを享受できておらず、希望のない空気感の中で生きている。

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社会が破壊されたままより悪化することもありえる

明日の展望も描けない国に希望などあるはずがない。国民には将来に対する恐れと、不安と、恐怖だけが心に積み上がっていく。すでに今の日本は約1200万人もの人たちが平均年収186万円の低所得層となっている。

2022年からは物価上昇と増税と政府の無策によって経済的なダメージを受けている人たちも激増した。若年層だけでなく、中高年も、高齢層も、みんな実質賃金の低下に苦しんでいる。

それでも、日本は曲がりなりにも先進国である。「まだ、個人の努力で成功をつかみ取るチャンスは残されている。狭き門となってしまったが、個人の努力で成功することは不可能ではない」と主張する人もいる。

だが、もっと時代が進めば、もう個人の努力ではどうしようもないほどの状況になってしまう。30年も日本を成長させることができなかった政党が、相変わらず無能政治家をとっかえひっかえしてダラダラと政治をしているのだ。この国が限界まで凋落していくのは時間の問題でもある。

子供たちも巻き添えになる。日本が貧困化し、親が低賃金化してしまうと、子供もその影響から逃れられない。これからは膨大な子供たちが貧困に落ちていく。

貧困に落ちれば、まず子供の教育費が削られるので、子供の学力も犠牲になる。そして、学力が劣るのは自己責任と見なされるので救いはなくなる。子供たちは、二重にも三重にも這い上がれない世界となっていく。

日本人は先進国で生まれて「運が良かった」はずだが、無能な政治家のせいで国が成長できないのであれば、誰もそれを享受できなくなる。成長できず、貧困が加速し、這い上がるのが難しくなる。

その結果どうなるのか。日本に生まれても「良かった」と思う人がもっと減っていき、徐々に社会に対して「底知れぬ怒り」を感じるようになっていく。その怒りは社会の底辺でマグマのようにぐつぐつと煮え立ち、膨れ上がっていく。

それでも政治が無策のまま推移して事態が改善されなければどうなるのか。それは、いずれ遅かれ早かれ爆発してしまうのだ。この膨れ上がるマグマが爆発して壊すのは、今の社会の政治・経済・文化である。今の日本社会が破壊されるのだ。

その結果、何が生まれるのかは未知だ。人々が今の社会をひっくり返したあと、ふたたび日本は高度経済成長の軌道に乗るかもしれないが、社会が破壊されたままより悪化することもありえる。

将来、私たちの国には何が待っているのだろうか……。

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