2016年、フランスは売春禁止法(性的サービスの購入を違法とする法律)を施行した。男も女も両方罰する。初回の違反には1,500ユーロ以下、再犯の場合は3,750ユーロ以下の罰金を科すとされる。
同時に、セックスワークをおこなう個人を被害者として認識し、非犯罪化した。これにより、セックスワーカーを処罰する以前の法律は無効となった。もし、セックスワーカーが外国人の場合、それ以外の仕事を探すことに同意すれば、フランス国内で一時滞在許可を得やすくなる。
ところが、この法律は結果的にセックスワーカーをより危険な場所へと追いやることになった。表面的にはセックスワーカーを保護する法律に見えるが、実際には彼らの状況を悪化させる結果となってしまったのだ。
セックスワークを禁止しても、それでこのビジネスがなくなるわけではない。
この法律により、セックスワーカーたちは人目につきにくい路地や郊外の森などで働かざるを得なくなった。その結果として収入が減少しただけでなく、暴力被害のリスクも高まった。
フランス社会政策研究所の2018年の調査では、法改正後に暴力被害が2倍に増加したことが報告されている。ところが、フランス憲法裁判所は2019年12月にこの法律を自画自賛しており、「ピンプから利得の源泉を奪うことによって」女性の保護に役立っていると評価した。
いずれにしても、フランスではセックスワークを取り締まるために法を厳しくしても何の役にも立たず、ビジネスは消えないし、女性は危険になるし、一部が地下に潜ったことによって、より実態が見えなくなってしまったのだった。
ところで、この時期にEU諸国は大量の移民を受け入れる政策が進められていた。地下に潜って当局の目が届かなくなった売春と、大量に流入した移民。この2つが混じりあって、フランスのアンダーグラウンドは奇妙なことになった。
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