引きこもりが増加し、とうとう146万人となっている。わずか4年で30万人も増加

引きこもりが増加し、とうとう146万人となっている。わずか4年で30万人も増加

日本の引きこもり問題は、近年ますます深刻化しており、統計データからもその実態が浮き彫りになっている。2023年の内閣府の調査によれば、引きこもり状態にある人は約146万人と推計され、これは過去最多の数字となっている。2019年の115万人からわずか4年で30万人も増加したのは驚きだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

支援される側の合理的な生き残り

日本の引きこもり問題は、近年ますます深刻化しており、統計データからもその実態が浮き彫りになっている。2023年の内閣府の『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』によれば、引きこもり状態にある人は約146万人と推計され、これは過去最多の数字となっている。

2019年の115万人からわずか4年で30万人も増加したのは驚きだ。特に注目すべきは、中高年層(40歳以上)の引きこもりが61万人に達し、若年層(15~39歳)の54万人を上回っている点である。

引きこもりの定義は、社会的参加を回避し、原則的には6ヵ月以上家庭にとどまり続ける状態であり、他者との交流がほとんどないことを指す。この引きこもりの面倒を見ているのが「親」なのだが、引きこもりを抱える親の辛苦も並大抵のものではない。

最初は親も「一時的なものだろう」と思う。しかし、数ヶ月がたち、1年がたち、2年がたつ頃になると、親はあることに気づく。子供は、「ずっと引きこもって生きるつもりだ」ということを……。

そして、自分たちが面倒を見ていることが、子供たちにマイナスの影響を与えていることにも気づく。引きこもって生きていけることを学んだ子供は、やがて自立のための努力をすべて放棄する生きかたを選ぶようになっていくのだ。

社会復帰しようという姿勢を出したら、親の支援が切れるかもしれない。追い出されるかもしれない。引きこもる子供は、そう考える。また厳しい社会に出ていくよりも、親に面倒を見てもらい続けたほうが楽だ。かくして、引きこもりは、親にどっぷりと依存して、そこから抜け出せなくなっていく。

生活保護も似たような問題を引き起こす。一時的に生活が困難になった人を保護するのが生活保護だが、いったん支援される側に落ちると、健康だった人でも精神的にも隷属が生じて抜け出せない。これは、生活保護を受給している多くの人が口々に言う現象だ。

支援を受ける側は、意図的にそれを悪用しようとしているわけではない。ただ、少しでも有利に、そしてたくさん支援を受けようと思う。そうすると、「自助努力をしないこと」が、もっとも合理的だと気づく。

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人間は弱く、安易な方向に流される

引きこもりになる人たちの多くは、社会から叩きのめされてしまった人だ。親はそれを見てきて知っている。だから、いつか立ち直ってくれることを願って「一時的」のつもりで引きこもることを許容する。

元気になったら自立のために行動してほしいと願っている。ところが、引きこもりが長くなってしまうと、当事者は「より長く」引きこもりでいるほうにエネルギーを注ぐようになる。

人間は弱く、安易な方向に流される。

親に面倒を見てもらっている引きこもりでも、国に面倒を見てもらっている生活保護受給者でも、「弱い立場」のままでいて、それで長く生きられるとわかったら、「意図的に弱い立場に固執する」ようになってしまう人がいるのもしかたがない。

これは、人間心理としては理解できる考えかただ。

弱者の面倒を見るなとは言っていない。まったくの逆だ。弱者の救済や支援は社会の責務である。生きるか死ぬかの地獄に突き落とされた人を助けなければならないのは、人間としては当然のことなのだ。それに疑問はない。

いかなる理由があっても、苦しんでいる人を放置するのは人間的ではない。誰もが何とかしないとならないと思う。引きこもりの親は、親としてできる当然のことをしているだけだし、社会から脱落した人々の救済となる生活保護はとても大事な制度だ。

一部に自立の気持ちを奪ってしまうという現象があっても、それで弱者を救済する側を責めるのは間違っている。かと言って、支援を受けている人たちが、自立心を失ってしまったとしても、それで弱者を責めるのもなかなか難しいものがある。

ただ何もしないでいたら温かいスープが飲める状況になっていたら、誰でも何もしないでじっとしていようと思う。「状況の依存」は誰にでも心に芽生える心理であり、人間的な感情でもある。

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やがてモンスター化していく

人は環境に依存する生き物だ。誰かに依存して生きられる人がそうするのは、環境にもっとも適応したサバイバル能力の強い人であると言うことも可能だ。それも合理的な選択なのだ。

しかし長い目で見ると、誰かに依存し、そこから抜け出さないで生きるのは間違った選択でもある。それでは、いつまでたっても、自分の人生を自分で生きることにならないからだ。

生き残るためには、親や支援者に対して「俺は苦しんでいる、俺は弱っている、俺はかわいそうだ。そう思うなら、もっと助けろ、ずっと助けろ、さっさと助けろ」と要求することが正義になってしまうからである。

弱者であることをつねに強調して、支援してくれている親などに対して高圧的になったりすることもある。引きこもりの子供に「働け」と叱ると、家庭内暴力を振るうようになったというケースもある。

親や支援者に対して高圧的に振る舞うことで、彼らの助けや支援を当然の権利として受け取るようになり、感謝の気持ちを忘れてしまう。これは、弱者としての立場を盾にし、自分の行動や責任から目を背ける一種の「モンスター化」である。

そうなると、親は子供の暴力や攻撃的な言動に対して恐怖を感じ、ますます距離を置くようになる。一方で、引きこもりの子供は孤立感を深め、自身の行動がさらなる引きこもりを助長する悪循環に陥る。

引きこもり状態にある人は約146万人いるということは、約146万世帯がそうした地獄を抱えているということでもある。

自立はたしかに大変である。普通の人でも自立するのに苦労する。だが、苦労するから放棄するというのは自分自身だけでなく、まわりにも、社会にも大きな損失となる考えかたであるともいえる。

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自立することのメリットを理解する

自立しなければ、多くの悪影響が生まれる。他人に依存することで、自分自身の能力や価値を卑下し、自信を失っていくし、支援がいつ切られてしまうのかという不安がつねについて回る。

それだけでなく、自立しないことで、自分で考えたり行動したりする機会が減り、問題解決能力が育たなくなる。自立しない生活を続けると、新しいことに挑戦する意欲や勇気が失われて、自分の可能性がつぶれる。

そして、自立できなかった期間が長ければ長いほど、自立への意欲が消えて完全に無気力状態に陥っていく。

逆に自立できれば、多くのメリットが生まれてくる。自分の選択や判断に基づいて行動できるようになり、人生を主体的に生きることができる。自立を果たすことで、自分に対する信頼感が高まり、自己肯定感が向上する。

自分で考え、行動することで、さまざまな問題に対処する力が磨かれるようになる。自らの収入で生活を賄えるようになり、自分の人生を自分で決めることができるようになる。他者に依存せず、自分自身で自分を満たすことができるため、心の安定が得られる。

自立することのメリットとデメリットをよくよく考えると、自立することのメリットは支援に依存してしまうよりもずっと大きなものであることがわかるはずだ。支援に依存するのは合理的なように見えて、長い目で見るとデメリットのほうが勝る。

社会から叩きのめされて一時的に自立を失ったとしても、やがては社会に戻っていくほうが自分自身にとっては有意義な点が多い。人間は誰も完璧ではないので、少しくらい失敗しても、それほどたいした問題ではない。みんな失敗を重ねながら、七転び八起きで生きている。

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