アメリカには「普通の人はここに立ち寄るな」といわれる危険なエリアがいくつもある。しかし、そういう場所にセックスワーカーたちがいる。
アメリカ・ロサンゼルスのフィゲロア通りの南ロサンゼルス周辺に位置する一部区間は、まさにそうした場所のひとつであり、ここもセックスワーカーが集まる場所として知られている。
このエリアは「The Track」や「The Blade」という通称でも呼ばれており、商業的なセックスワークが長年おこなわれてきたエリアでもある。
「The Track(追跡)」という呼び名は、路上に立つセックスワーカーが顧客を求めて歩きまわる様子を指しており、「Blade(刀身)」という言葉も同様に、セックスワークが盛んだが危険な区域であることを示している。
このエリアに路上の女たちが集まる理由は、このエリアにモーテルがあり、ストリップ・クラブがあり、貧困層もこの界隈に住みついているからでもある。南ロサンゼルスの一角は貧困や経済的不平等、住宅不足といった問題が根深く存在している。
そのため、ホームレスが街をさまよい、社会から落伍した若者が自暴自棄になってドラッグの密輸や強盗をし、貧困状態にある女性は生活の糧を得るためにセックスワークに依存せざるを得ない状況に追い込まれている。
南フィゲロア通りの一角はまさに、そうしたアンダーグラウンドを凝縮したようなエリアとなっているのだった。
この地域は人身売買(トラフィッキング)とも深くかかわっている。とくに未成年の少女や移民の女性が強制的に、あるいは詐欺的手段でセックスワークに従事させられるケースも頻発している。
近年、ロサンゼルス市ではこのような問題に対処するため、警察や非営利団体がセックスワーカーを「犯罪者」としてではなく、「被害者」として扱う方向へシフトしているのだが状況は改善していない。
それも当然だ。経済的不平等や社会的排除が解消されない限り、彼女たちを取り巻く問題は根本的に解決しない。