ブラックアジア『売春地帯をさまよい歩いた日々・インドネシア編』は、主にシンガポールに近いリアウ諸島が舞台になっている。なぜ、リアウ諸島だったのか。この島は、まさにハイエナのためにあったような非常に素晴らしいエリアだったからだ。
バタム島、ビンタン島、カリムン島、クンドゥール島……。今でも名前を聞いただけで胸の鼓動が高まる。私の思い出は、この島にいた女たちのことでいっぱいだ。悪い女も、悲しい女も、愛おしい女も、みんなリアウ諸島にいた。
2000年当時、インターネットではカンボジアの首都プノンペンにあった悪徳エリアに日本人の男たちの目が集中していたが、そこはあまりにも世間に知られ過ぎていて摘発も時間の問題であった。
人身売買に、児童売春に、盗撮が横行し、世界最大のNGO団体も入ってきて男たちを監視し続けて警察に摘発させるような場所になっていたのだが、私自身は早々にこのカンボジアを捨てて次に向かったのがリアウ諸島だったのだ。
なぜ、リアウ諸島だったのか。それは、リアウ諸島こそ「レッドライト地区の本命」であったからだ。特に、カリムン島の「パヤラブ」は、今まで見てきた中でも最大規模の悪徳エリアであり、今でもあそこを超える場所は見たことがない。
当時、私は「パヤラブ」の存在を誰にも一言も漏らさなかった。それはそうだ。私が漏らしたら、カンボジアの危険になった悪徳エリアに巣食っている連中がこちらに回ってくる。
彼らは騒々しくやってきて場を荒らし、相場を知らないので言い値で相場を釣り上げていき、インターネットでも騒ぎ立て、私が沈没していた場所はあっという間に摘発対象となる。
そういうのが嫌だったので、私は「パヤラブ」の存在はずっと隠し通して誰にも言わなかった。本当にずっと隠し通した。魚がひしめく広大な池は、誰にも言わないでひとりで行くのが素晴らしいのだ。
では、なぜ今は普通に名前を出しているのか……。
コメントを書く