◆ストリート売春するトランスジェンダー(1)。日本がパンドラの箱を開ける日

◆ストリート売春するトランスジェンダー(1)。日本がパンドラの箱を開ける日

新宿の西口から東口に向かうために思い出横丁のガード下のトンネルのようになった通路を歩く。この通路はいつしか改装されて明るく清潔になったのだが、以前からホームレスたちがダンボールを敷いて寝る場所には違いないので、今でも都会のどん底《ボトム》がどうなっているのかを垣間見ることができる。

この日も三人のホームレスが通路の脇でダンボールと毛布と寝袋を敷いて、プラスチックのお椀を道ゆく人たちの前に置いて物乞いをしていた。通りすがりの奇特な人が同情して小銭を入れているようで、私が立ち止まってのぞくと1円玉や10円玉に混じって100円もちらほらと見えた。

毛布は新しい。それは、こうしたホームレスを支援するNPO団体が支援して提供しているものだからでもある。

ホームレスのひとりは、ダンボールの上に三枚も四枚も毛布を重ねてあぐらをかいてペットボトルを飲んでいた。通りすがりの通行人には決して目を合わせない。どのホームレスも年齢は60代を超えているような相貌で、かなり長期に渡って使っていると思われるマスクをつけて顔を隠している。

彼らを見つめながら東口に出ると、そこには清潔でこざっぱりした服装をした若いカップルたちが溢れていて、新宿の午後6時の夕暮れが終わるが本格的な夜ではない時間を楽しんでいた。

歌舞伎町には、劇場通りから入る。右端のコンビニのガラスの壁面のところには、60代くらいの年齢の男が二人、カップ酒を飲んで酔っ払っている。

(まだ彼らはここにいるのか……)

私は心の中で苦笑する。一ヶ月前も、二ヶ月前も、彼らは私が歌舞伎町に寄るときはいつもそこにいて、まるでそこに住んでいるようにも見えた。彼らもまたホームレスなのかもしれない。そんなことを思いながらも、私は奥に急ぐ。

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