先日、刑務所上がりの知り合いといろいろ話をしていたのだが、ご存知の通り日本ではカタギになろうとして履歴書を開いて、正直に「刑務所に勤めていました」と書いても評価されることはない。
つまり、前科がある人間はいくら刑務所の中で更生したところで、それで再び表社会で普通に働けるようになるとは限らない。履歴書に正直に前科を書いたら、その時点でほとんどの面接は落ちる。
前科があることを言わなければバレないこともあるかもしれない。しかし、最近の人事課は採用する人間の名前を必ずインターネットで調べるわけで、比較的大きな事件の場合は一瞬で名前が出てきたりする。
また、企業はネットとは別に個別の身辺調査をすることもあるわけで、そういったところから隠していた前科が漏れることもある。
懲役が長ければ長いほど職歴の空白ができる。この空白をいかに説明するのは意外に苦慮するはずだ。何事にもかっちり几帳面にマネージメントされる日本では、「職歴の空白」は人事担当者が真っ先に追及してくるところなのである。
そんなわけで、刑務所上がりの知り合いは、知り合いの店や日雇いで働くしかないわけだが、いずれはまた組織に戻っていくのかもしれない。
そう言えば、私自身も履歴書は空白になる。私はこれまで東南アジアをぶらぶらさまよいながら気ままに生きてきた。そうなると、私が履歴書は何も書くことがない。採用担当者から見たら最大級の不審人物である。
「この空白の期間は何をしていたのですか?」と聞かれたら「東南アジアのスラムだとか売春地帯をウロウロしていました」と言うしかないわけで、その時点で私も前科者と同じく門前払いされるのだろう。
そんなわけで、私の気がおかしくなって「普通の会社に入りたい」とか希望したところで時間の無駄なことが分かる。「職歴の空白」というのは、些細なようでいて実は日本では人生を左右するほど重いものなのである。