11月に入ってからオミクロン株という新たな変異体が登場して再び世界は混乱しているのだが、売春や風俗の世界はどうなっているのかというと、これがまったく影響がなく、もう誰もがコロナに飽きて通常に戻りつつある。
今までコロナを恐れて売春や風俗の世界から足を洗った女性も戻って来ているし、コロナで経済的ダメージを負った昼職の女性も「未経験」として新たに夜の世界に飛び込んで来ている。
私自身は情報をもらうために現役の風俗嬢とは喫茶店で会って話を聞くだけで、すでに長いこと真夜中の世界の現場から遠ざかったままで推移している。定点観測として歌舞伎町を歩いてみるくらいはしているが、「野良犬の女たち」と関わることはほとんどなくなった。
しかし、この瞬間にでも今までまったく夜の世界と関わったことがない女性が、真夜中の世界に恐る恐る潜り込んでいるのだと考えると、何か居たたまれないような落ち着かない気持ちになる。
彼女たちは今、強い不安と恐怖に打ち震えているはずなのだ。はじめての環境に身を投じる時は誰でもそうした気持ちになるが、まして表では言えない裏の仕事である。そこに「今まで普通の生活をしていた女性」がはじめて関わっていく。
それは「どれほど恐ろしいだろうか」と想像することもある。「最初は店に面接を受ける電話する方が怖かった」「面接が決まってもお腹が痛くなって行けないとか、何回もやって、やっと面接して……」という話も聞いたことがある。(Amazon:デリヘル嬢と会う)
東南アジアでも、貧困に追われ、どうしようもなくなって売春ビジネスに絡め取られる女性も多い。覚悟はあっても、恐怖は隠せないことが多い。そういった「はじめて夜の世界に飛び込んだ女性」を、私はあちこちでたくさん見てきた。
強い不安と恐怖に打ち震えている女性たちの頼りなげな姿が目に浮かぶ。本当に足が震え出すような恐怖であるはずだ。