当たり前の話だが、一個人がどのような権力を持ったとしても、それで社会を自分の思い通りに変えられるわけではない。
プーチン大統領がウクライナを占領したいと思ってもうまくいかないのは見ての通りだし、逆に言えばバイデン大統領がロシアを何とかしたいと思っても戦争を止めることすらもできない。
社会は独裁的な地位を持った権力者ですらも「何ともならない」ものなのである。
まして、独裁者でも何でもない個人が社会を自分の思い通りに変えられると思ったら大間違いだし、自分が何か夢や欲望を持ったからと言って、それが宝くじに当たったかのように自動的に実現するわけでも何でもない。
実は私は20歳まで「一生懸命に努力したら何でも叶う」「頑張れば何でも実現する」みたいな子供っぽいことを本気で信じていた。
しかし、21歳になった頃はそうした楽天的な考え方、すなわち「楽観思想」とも言うべきものは完全に捨て去って、現実をしっかり見るようになった。
なぜか。
たまたま訪れたタイの貧困地区を流されるように旅しているうちに、私は「努力しようが、頑張ろうが、もうどうにもならない境遇にいる人たち」と大量に接するようになっていき、目が覚めたのだ。
誰もが何とかしようと努力して苦しんで悩んで生きている。そんな中で、どうにもならない境遇にいる人たちは、もはや自己努力で何とかなるような世界ではないのである。たとえば……