「自分だけ大丈夫」という思い込みは被害に遭って醒める?

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東南アジアに行ったら、絶対に気をつけなければならないことがある。それは交通事故だ。日本では無謀な運転が減って交通事故は減少傾向にある。

ところが東南アジアは違う。特にタイだ。交通事故がやたらと増えている。あまり知られていないが、タイは東南アジアで最も交通事故が多い国なのである。

いや、東南アジアどころか、世界全体で見ても交通事故の多さは突出していて、堂々たる世界2位だ。ちなみに1位はリビアである。

実際、タイに住んでいる人で交通事故に遭いそうになった人は多いはずだ。私も危うく車に轢かれそうになったことが2度もあるし、バイクが向こうから突っ込んで間一髪で避けたこともある。

統計的には低いが、カンボジアも最悪だ。

この国で私は交通事故に遭っている。真夜中のプノンペンにモトバイクに乗っていた時、後ろから猛スピードでやってきたバイクに当て逃げされてしまった。

この時、衝突の衝撃で足の親指の爪が肉ごと飛んでいき、私の足は血まみれになった。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

遭遇したことがない人は、実感がわかない?

ちなみに、この時の交通事故でモトバイクのドライバーが傷を見て差し出してくれたのが目薬だった。彼は傷には何でも目薬をさせば治ると思い込んでいたのである。

プノンペンは交通規則が守られていない。逆走に、暴走に、迷走に、もう何でもありだ。子供までもがヘルメットなしでバイクを運転して喜んでいる。

2017年に久しぶりにプノンペンに訪れたが、運転のめちゃくちゃさは大して変わっていなかった。タイの方が安全になったような気もするが、統計を見ると気のせいのようだ。

交通事故には遭っていないが、何度も「事故に巻き込まれるのではないか」と思ったのはインドである。タクシーの運転の荒さは本当に肝を冷やす。

こうしたこともあるので、私は交通事故に関しては「自分だけは大丈夫」とは一度も思ったことがない。日本でも交通事故に遭って半年も寝たきりになった経験もあるので、なおさら交通事故に関しては楽観的になれない。

しかし、私と違って人生で一度も交通事故に遭ったことがない人は「自分だけは大丈夫」だとタカをくくっているはずだ。事故に遭遇したことがないから、実感がわかないのだ。

人間は実感がわかないことに関しては、なかなか危険を察知することができない。交通事故だけではない。すべての事故・災害・危険・犯罪に関して、自分が危険な目に遭ったことのない人はみんな「自分だけは大丈夫」と思う。

たとえば、世界で最も危険な場所は戦争の最前線だが、弾丸が飛び交う危険地帯でも多くの兵士は、自分だけは弾が当たらないと思い込むことが知られている。

これを「正常バイアス」と呼ぶ。ウィキペディアではこのように説明されている。

『自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる』

東南アジアではヘルメットしないでバイクを運転している人たちが多い。暑い国なのでヘルメットがない方が気持ちが良いのは分かるが……。

2015年の人口10万人あたりの交通事故の死亡者数統計(WHO)。これを見ると、タイの交通事故の多さが突出していることが分かるはずだ。

「自分だけは大丈夫」が、まったく通用しない

犯罪や詐欺に関しても、人々は往々にして正常バイアスにとらわれる。

海外に出れば、まわりはすべて外国人となり、慣れない文化、慣れない言葉によって、目の前にいる人が悪い人なのか、良い人なのか、まったく分からなくなる。

詐欺師は全力で騙してくるので、第三者が言うほど簡単にトラブルを回避できるわけではない。

睡眠薬を入れた飲み物を飲まされて身ぐるみ剥がれる詐欺もあるが、現地に深く沈没すればするほど、親切で水をもらったり、食事に誘われたりすることもあるわけで、自分が被害に遭うかどうかは本当に運でしかない。

海外でトラブルに巻き込まれるのは避けられない。どんなに用心しても、盗難や詐欺は避けられない。ホテルの部屋に貴重品をきちんとバッグに隠しても、それがなくなってしまうのが海外のホテルである。

「自分だけは大丈夫」が、まったく通用しない。

タイは比較的安全だと言われるが、私はそのタイで、いったい何度、バッグの中のものを紛失するというトラブルに巻き込まれたか分からない。

若い頃は、好んで「旅社」と呼ばれる安ホテル(ゲストハウス)に泊まっていたのだが、タイ人よりもむしろ得体の知れない同居人の方が信用できなかった。

小さな備品は、何度も何度もなくなった。

その結果、私はパスポートと金以外の貴重品はいっさい持たなくなり、カメラすらも持たない時代の方が長かった。基本的に、金とパスポートが無事であれば、あとは手ぶらでも問題ないような旅をしていたのである。

所持していた金はまるで魔法のように消える経験も何度かした。誰かに抱きつかれ、気が付けばポケットの小銭が消えていたこともある。それはまだいい。やられたと分かるからだ。

確かあったはずの紙幣がなくなっていたこともある。

1000バーツが数枚ポケットに入っていたはずなのに、それが勘定のときに消えていた。まったく心当たりがないのに、まるで最初から存在しなかったかのようになくなっていた。

いつ、どこで、誰にやられたのかすらも分からない。そんなことも、しばしばあった。

最近は、タイでもカンボジアでもこうしたセーフティボックスが用意されるようになった。本当に安心できる。しかし、東南アジアだ。本当に信じて良いのだろうか。
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被害に遭わないと、そもそも危機意識が働かない

「自分だけは大丈夫」という思い込みは、実際に被害に遭わない限りは消えることはない。

日本人が何度も何度も海外で同じ手口で詐欺に遭ったり、騙されたりしているのは、国内があまりにも安全すぎて海外が危険だという実感がまったくわかないからである。

他人の被害は薄々聞いていても、「まさか自分が被害に遭うことはない」と無意識に思う。交通事故に遭わない限り、交通事故に対して危機意識が働かないのと同じだ。

他人が差し出した飲料は飲むなというのも、実際に被害に遭わないと実感がないから、目の前に差し出されたら「ありがとう」と感謝して飲んでしまう。

一度でも被害に遭えば危険意識が働くが、被害に遭ったことがなければ、そもそも危険意識そのものが働かない。

私に危機感がなければ、私も睡眠薬強盗の被害者になっていたのは間違いない。(ブラックアジア:フィリピンのキアポに巣くう女。裏のある女の仕掛けたワナ

私は安宿で何度も物をなくしているので、外部からくる泥棒どころか、もはやホテルの従業員も信じていない。

特にインドではまったく信用しない。だから、現金を隠すのも必死だった。(ブラックアジア:旅の中で現金をどう隠すか(2)インドではここまでする

盗まれないために秘伝の財布すらも作る。(ブラックアジア:旅の中で現金をどう隠すか(1)秘伝の「財布」を公開

日本で暮らし、日本から出たことがない人たちは、海外の旅人が必死になって金を隠しているのを見ても「何をそこまで」と思うはずだ。

しかし、実際に被害に遭った人から見たら、「リュックの奥に入れたくらいでは隠したことにならない」と感じる。この意識の差は、実際に自分が危険な目に遭ったことがあるかどうかの差でもある。

一度でも被害に遭えば、目が覚める。

真夜中を歩く時、いつしか私は所持金はあちこちのポケットに分散し、さらに一部は小さく織り込んで衣服のどこかや靴の中などに隠したりするようになった。分散していれば、一部を取られてもすべてを取られることはない。

私がそこまでしないと安心できないのは、私自身がそれだけ痛い目に遭い続けてきたからだとも言える。備えあれば憂いなしというのは本当だ。

そして、「自分だけは弾が当たらない」というのは嘘だ。(written by 鈴木傾城)

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セーフティボックスは本当に安全なのか。それを心から信じている人がいるのであれば、これをじっくり見て欲しい。

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