東南アジアでは今も昔も一貫して「美白」が中心になっていて「褐色の美」というのはあったとしてもあまり評価されない傾向にあった。どんなに美しい顔立ち、美しいスタイルでも、肌が黒いというだけで「あれは駄目だ」という話になってしまったのである。
だから、「肌の色は重要じゃなくて顔やスタイルが重要」とか「褐色の肌をした女性がむしろエキゾチックでいい」と思っている白人《ファラン》や私のような考え方をする人間は変人扱いされるほどであったのだ。
タイにも華僑系がたくさん入り込んでいて、彼らは現地のタイ人に同化して暮らしているのだが、この華僑系は完璧に肌が白いので、だから華僑系のタイ女性はそれだけでモテたのである。
タイで売れる化粧品も「美白」一辺倒である。コマーシャルも肌の白いタイ女性しか出てこない。テレビドラマに登場するタイ人も、何か違和感があることが多いのだが、それも登場人物の多くが白い肌の人物が多くて、やや現実離れしているような感じがあるからだ。
テレビや広告は「こうありたい」と、その民族が願うものがイメージとして投影されるので、現実離れしていくのは仕方がないのかもしれない。それが極端に誇張されているのが実はインドのボリウッドである。
そこに出てくるのは豪華絢爛なセットで繰り広げられる肌の白い美男美女である。あれを見て「インドはそういう世界なのだ」と思っていると、現実のインドを見たら間違えた国に行ったのではないかとでも思うだろう。
東南アジアでもインドでも、「肌が白い」というのは100%正義なのである。