欧米で言うシーメール、日本で言うニューハーフ、タイで言うレディーボーイ。どこの国でも「女性として装う男性」の存在がある。彼らは「心は女性、身体は男性」という立場であり、心に合わせて身体を女性のように装うので「トランスジェンダー」と呼ばれている。
私は以前から彼らに関してはほとんど違和感も拒絶感も感じていないのだが、それは長らくタイの売春地帯にいたからである。
タイはレディーボーイたちの存在はまったく珍しいものではない。歓楽街だけではなく、彼女たちが銀行の業務や薬局の店員や旅行代理店の窓口をやっているのも普通に見かける。
アスリートにも普通にレディーボーイたちがいて、バレーボールの世界でレディーボーイだらけのチームがいたのは映画にもなった。日本でも大ヒットした映画で『アタック・ナンバーハーフ』というタイトルが付けられていた。
このトランスジェンダーたちはLGBTの「T」に当たる性的少数派の人たちであり、リベラル・フェミニストたちの運動の中で「私たちの権利も認めて欲しい」と主張している。女性たちも彼らが権利を主張することを容認し、共に権利と理解獲得のために闘っていた。
しかし最近になって、女性たちとトランスジェンダーの間で大きな亀裂が生まれて、内紛ような状態になっている。女性とトランスジェンダーの共生を女性たちが拒絶するようになってきているのである。
この拒絶を象徴するのが小説『ハリー・ポッター』の作家であるJ・K・ローリングをトランスジェンダーたちが脅迫するという事件だった。何があったのか。