「わたしも日本人に生まれたかったわ」
インドネシアで知り合ったある女性に、しみじみとそう言われたのは今でも忘れられない。彼女の真意はこうだった。
「日本は豊かで清潔でとても良い国で、あなたはそこで生まれたのだから、幸せなはず。わたしもそこで生まれたかった」
彼女は貧しくて、生活に苦しんでいたので、日本は夢のような国に見えたに違いない。貧しい人が先進国に憧れるというのは、よくある話だ。
では、日本人として生まれたら、無条件に幸せなのか。日本人の誰もが「そんなことはない」と即答するはずだ。
世界を見回したあと改めて日本を見ると、日本で暮らすというのは、いろんな面で幸運だと言えることは多い。安全で、清潔で、静かで、国民性は素晴らしい。
しかし、それがそのまま個人の幸せに直結しているわけではない。個人の幸せというのは、国の良し悪しとはまた別の次元である。