今まで何の制限もなく、自由に気ままに好きなだけ夜の街をほっつき歩いていた。しかし2020年は、中国発コロナウイルスのパンデミックでそういうわけにはいかなくなった。「やれやれ」と思う。
本当は3月に東南アジアのどこかに出かけ、東南アジアの真夜中を再びうろうろしたいと思っていた。スラムみたいなところに沈没して、安いメシを喰らい、暑さに汗をかき、野良犬のようにさまよい歩きたかった。
タイに行こうか、カンボジアに行こうか、それともまったく違う国に行こうとか考えていた。6月か7月もやはり3月とは違うどこかに行こうと思っていた。
しかし、コロナで計画は完全に潰(つい)えた。しばらくは、海外にふらりと旅行することもできないし、気が向いたら真夜中の街をうろうろして、見も知らぬ真夜中の女たちと濃厚接触することもできない。
3月あたりは、こんな騒動は6月くらいに終わるのではないかと思っていた。人類の英知がすぐにワクチンや治療薬を見つけて、6月か遅くても7月くらいには何もかもが終わって、コロナは昔話になると思っていた。
しかし、4月になり5月になるにつれて特効薬はそんなに早くできるものではないし、そもそもワクチンの開発が成功するのかどうかも分からないという現実が見えてくるようになった。
それは、私にとって「今までやってきたことが何もできなくなった」ということを意味している。世界中の国が、国外からやってくる人間を遮断し、歓楽街は閉鎖され、真夜中の女たちが消えてしまった。ハイエナ稼業は休業せざるを得ない。