問題解決能力が備わっている人から見ると、何もできない人は理解できない

問題解決能力が備わっている人から見ると、何もできない人は理解できない

問題解決能力がある人は、自分が追い詰められたら、必ず解決方法を探し、対処方法を考え、実行し、時には多くの人に助けを求めて窮地を脱する手がかりを得ようとする。こうした努力ができる人は気付いていないかもしれないが、実は「改善に向けて努力する」ということ事態が「能力」なのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

ズルズルと深みにはまって手遅れになる女性も多い

先日、ある人に「風俗で働いていても食べていけない女性がいる」という話をしたら「どうしても理解できない」と言われた。

「風俗は稼げるはずなのに、どうして貧困になってしまうのか?」

私は「誰もが容姿端麗で客がつくわけではない」「金の使い方が荒い女性も多い」「継続して働かない、働けない女性もいる」「単価が安い場末の風俗もある」ことを説明した。

そして、「いくら身体を売っても、性サービスをしても、それで食べていけるとは限らないのだ」と答えた。

「それじゃ、身体を売る意味があるの?」
「その仕事しかできない女性もいます」

「身体を売って食べていけないんじゃ、やめた方がいい。行政に助けを求めれば相談に乗ってくれるだろうし、親は何をしているのか」と言うので、「そういう女性はそもそも行政に頼るという発想はないし、親とも縁が切れていることも多い」という主旨のことを説明した。

すると、「しかし、困ってるなら相談して生活を変えた方がいい。まわりの人をうまく使うのがコツだ。何にしても、普通の仕事をして地道に働くのが一番いい」と彼は言った。

確かにその通りだ。しかし、そういうことができる女性であれば最初からそうしているし、自分の境遇がどんどん悪化しても、誰にも相談できないままズルズルと深みにはまって手遅れになる女性も多い。

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立ち向かうのではなく「いかに逃げるか」

風俗の世界でも、いろんな問題が起こる。客とのトラブル、店との待遇交渉、同僚たちとの人間関係、収入の管理……。恐らく毎日、何らかの問題が発生しているはずだ。

最近では、コロナによって風俗も客が激減しており、今までのように稼げなくなっているのだが、そうした問題の中でも要領良く生きられる女性もいる。

たとえば、常連にメッセージを送って積極的に客引きして売上を上げるとか、店を通さずに太客と直引き(じかびき)するとか、コロナへの危機感が薄い地方に出稼ぎに行くとか、あらゆる方法を模索して生き残りを計る。

そうしたことができる風俗嬢は、問題解決能力がきちんと備わっていると言える。仮に何をやっても風俗で生きていけなくなったとしても、きっと昼職(表社会)に転向して、そこでそつなくやっていけるだろう。

実際、「コロナが落ち着くまで生活を変えよう」と考えて、一時的に風俗から足を洗って昼職に転向した女性もいると聞く。社会の状況を見て、うまく対応できる女性がいるのである。

しかし、全員が全員そうではない。

大きな問題が降りかかっても、問題をどうやって解決したらいいのか分からない女性も多い。新しい社会情勢に対応し、自分の生き方を変える気力がないこともある。どうしたらいいのか分からないので、何もしないで「ただ投げ出す」女性もいる。

面倒なことになったら、問題を解決するのではなく投げ出すのだ。

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「いかに逃げるか」がテーマになる女性もいる

一箇所の店でじっくりと計画的に働く女性もいる一方で、何か嫌になるとすぐに投げ出してあちこちの店を転々とするような女性もいる。

風俗でも、あっちの店で少し働いては辞め、こっちの店で少し働いては辞め、日本の各地域をそうやって野良犬のように流れ歩いている女性もいる。

こうした女性は「転々虫」と呼ばれているのだが、実際に転々虫をしている女性の話を聞くと、少しでも気に障ることがあるとすぐに投げ出して仕事を辞めてしまう傾向にあることが分かる。

嫌なことがあると、その解決方法は「逃げること、辞めること、投げ出すこと」なのである。

すべてに関して「投げ出す」ことが身に付いており、だから彼女たちは人生のどの局面でも安定を手に入れることができず、社会の底辺を這い回ることになる。

社会のそれぞれの業界で一流の人の生き様は、「次々とやってくる人生の艱難辛苦にいかに真っ正面から立ち向かうか」がテーマになる。

社会の底辺を這い回る人たちもまた艱難辛苦が次々と襲いかかるのだが、彼らの対処は立ち向かうのではなく「いかに逃げるか」がテーマになる。立ち向かうという選択肢を取らない。常に逃げるのだ。

そのため、次第に追い詰められてどうにもならなくなってしまう。そういう女性が、「風俗で働いていても食べていけない」という状況に追いやられるのである。

「困ってるなら相談して生活を変えた方がいい。まわりの人をうまく使うのがコツだ」と言われても何もできないまま問題を放置してしまう姿が私には見える。

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最初から問題解決能力が備わっていない

問題解決能力が備わっている人から見ると、困り果てているのに問題に対処しようともせず、何もしないまま放置して、結局は破滅してしまう人を見て「どうしてそうなるのか」と理解できない。

「なぜ対処しないのか。なぜ解決しないのか。なぜ投げ出すのか?」

問題解決能力がある人は、自分が追い詰められたら、必ず解決方法を探し、対処方法を考え、実行し、時には多くの人に助けを求めて窮地を脱する手がかりを得ようとする。

問題解決に失敗してより窮地に落ちることはあっても、放置して窮地に落ちることはない。問題を座視しないからだ。必ず、あらゆる方策を試して状況を改善させるために努力する。

こうした努力ができる人は気付いていないかもしれないが、実は「改善に向けて努力する」ということ事態が「能力」なのである。「能力」であるとすれば、それが備わっている人もいれば、備わっていない人もいるということだ。

何か問題が起きて追い詰められるようなことになった場合、問題解決能力を発揮できる人がいるのと同時に、そういうことが一切できない人がいるのも事実なのである。それも、かなりの数で存在する。

そういう人が社会のどん底(ボトム)で苦しんでいるのだが、問題解決能力がある人には彼らが理解できない。この「溝」というのは、実はかなり深いのではないかということを私は最近感じている。

私自身は、どちらかと言うと問題解決能力を発揮しようと画策する性格だ。しかし、問題に押し潰されるだけで何もできない人たちを長く見てきているので、そうしたタイプの人がいるのだということは肌身で分かっている。

「なぜ対処しないのか。なぜ解決しないのか。なぜ投げ出すのか?」

それは、最初から問題解決能力が備わっておらず、必然的にそうならざるを得ないからである。

世の中は様々な人がいる。私も病気や事故や老齢で判断能力を失ったら、問題解決能力を失って何もできない人間になるだろう。そういう意味で、私は彼らが自分とは別種の人間だとは思っていない。

『野良犬の女たち ジャパン・ディープナイト(鈴木 傾城)』

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